なぜ日本企業の業績が低迷しているのか。従業員意識調査を行うGPTW Japan代表の荒川陽子さんは「現在の日本企業に最も多く見られるタイプは、『働きやすさはあるが、仕事のやりがいがない』という『ぬるま湯職場』。企業業績と働きがいには相関があるため、日本企業が低迷を脱するには、この問題を解決する必要がある」という――。

※本稿は、荒川陽子『働きたくなる職場のつくり方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/OUTDOOR NAVIGATOR
※写真はイメージです

「やる気がなくなる職場」と「働きたくなる職場」

組織のマネジメントのあり方は、職場によって千差万別です。たとえば「経営者のひと言で全てが決まっていくような職場」もあれば、「現場が大きな裁量権を与えられ、リーダーシップを発揮していくような職場」もあります。

経営・管理者が従業員に「ビジョンを提示していない」「人材育成がおざなり」にもかかわらず、やみくもに業績アップを迫るという職場は珍しくありません。この状態では従業員と経営・管理者との「信用」、仲間同士の「連帯感」や仕事に対する「誇り」は生まれないでしょう。従業員は次第にネガティブな感情が湧いてくることになります。

このような職場は、モチベーションが低下する「やる気がなくなる職場」と言えるでしょう。従業員の能力は発揮されず、取引先や顧客などの職場以外の人たちに対しても好印象を与えられるとは考えにくいものです。業績面でも成果を上げることは期待できません。

では、反対に「働きたくなる職場」を考えてみましょう。

職場環境や人材への投資を惜しまない「経営者」
個人と向き合う姿勢を持った「管理職」
活発に意見を出し合い、チャレンジを生み出す「企業風土」

このような職場で働く従業員は、モチベーションが高く、成長の機会に恵まれ、ゆくゆくは会社の業績アップや発展に繋がるでしょう。そうなるうちに信頼が生まれ「自身の自己実現」と「会社の成長」が交わり、職場と従業員の双方に好循環が生まれます。

これら2つの職場の違いをもたらすものは何でしょうか。根本にあるのは「働きがい」であると私たちは考えています。

世界基準で「働きがい」を調査している

やる気がなくなる職場と働きたくなる職場、違いを紐解くには、「従業員エンゲージメント」のレベルを調べる必要があります。エンゲージメントとは、「会社と従業員の間の信頼関係」と言い換えられます。なお、働きがいとエンゲージメントは、ここではほぼ同義と捉えて構いません。エンゲージメントレベルが高いと、従業員のモチベーションや生産性の向上に好影響を与え、企業の人材定着率も上がるため、世界的に注目を集めています。

私たちGreat Place To Work(以降、GPTW)は、その見えにくい部分である企業のエンゲージメントレベルを調査し、そのレベルが一定水準を満たした企業を認定しているのです。具体的には、会社・職場と従業員の関係や状態を調査・分析し、会社にフィードバックしている機関です。本部はアメリカで、Great Place To Work Institute Japan(以降、GPTW Japan)は日本においてその活動を行っています。私は、日本の職場を「働きがい」で溢れる場にするべく代表を務めています。

調査はアンケート形式で行います。調査項目、評価基準はグローバルで統一されています。調査には毎年約100カ国で10000社、330万人を超える従業員が回答しており、世界最大規模の従業員意識調査(エンゲージメントサーベイ)になっています。日本では年間導入社数が634社(2023年度版調査時点)です。

また、エンゲージメントレベルが高い水準の会社は「働きがい認定企業」として選出し、さらにその中から特に働きがいが高い企業をランキング形式でメディアに発表します。アメリカでは『FORTUNE』誌を通じて毎年「働きがいのある会社」ランキング(Best Workplaces™)を発表。これに掲載されることが一流企業の証とされています。

GPTW Japanでは、ランキングを毎年2月に発表しています。世界中の企業を調査・分析している私たちGPTWがなぜ、働きがいを大事にしているのでしょう。