熟年こそ「週4オナニー」を勧める理由

体の機能は、使わなければ「不要」とみなされて、やがて衰えてしまいます。しかし、だからといって毎日セックスするのは、現実的ではありません。そもそも「パートナー不在」という状況もあります。ですから、セックスができないときは、マスターベーション、つまりオナニーでも構いません。

中高年にとって、オナニーは性的快楽だけではなく、性機能維持のためのトレーニングです。私もよく患者さんに「何もせずにペニスを放置しておいたら、陰茎海綿体は線維化してしまうのだから、オナニーは機能訓練、リハビリよ! 今日からガンガンやってください」とお話しします。すると患者さんは目を丸くしたり、噴き出す人もいます。もちろん私は、大真面目にお話ししています。

先ほどの「使わないと性器は劣化する」という言葉のとおり、セックスでもオナニーでも、定期的に勃起によってペニスに血流を促し、射精で前立腺を刺激していかなければ、ペニスは萎縮し、線維化してしまいます。目安は週に4回、もちろん毎日しても構いません。

かつて「オナニーをしすぎたら、頭が悪くなる」という言説がまことしやかにささやかれていた時代がありました。しかしそのような言説は、なんら根拠がありません。心身ともに悪影響どころか、機能維持の側面では好影響を及ぼすので安心してオナニーしてください。

前立腺がんになるリスクが低減する研究も

また、「勃起のトレーニングで、射精までしてもいいのですか?」とよく質問されます。もちろん射精までしてください。射精をすれば、前立腺の血流が良くなり、精巣の働きも活発になります。

写真=iStock.com/Pixelimage
※写真はイメージです

米国のハーバード大学公衆衛生大学院が男性医療従事者約3万人を対象に行った調査では、月に21回以上射精する人は、月に4~7回の人に比べて前立腺がんになるリスクが約2割低下することが明らかになっています。

「オナニーは、すればするほど健康になる」のです。

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また自律神経の観点からいえば、勃起を司るのは副交感神経ですが、射精を司るのは交感神経です。簡単にいえば、副交感神経は体を休め、リラックスモードにする神経。片や交感神経は、体を活動モードにする神経です。

通常、セックスの際は「勃起→射精」という一連の流れを踏み、その際、副交感神経と交感神経の2つの神経がうまく切り替わっています。この「交感神経→副交感神経」の切り替えのトレーニングとして、定期的なオナニーによる射精は有効です。

ただし、あまりに強い力でペニスを握ったり、床に下半身を押し付けるような体勢でのオナニーは、遅漏や腟内射精障害のリスクがあるので避けたほうがいいでしょう。

熟年のオナニーは週4回のトレーニング。それを忘れないでください。

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