賞賛すべき大谷の才能

打席で足を上げないノーステップ打法は、「フライボール革命」に対抗するために投手が変化球を多投し始めたことに対応して広まった。重心の移動が難しいが、変化球に対応するためには必要な技術だ。

「『フライボール革命』だけではなく、自分に足りないものを吸収するためには、日本で積み上げてきたものを平気で壊すことができる。そして目の前にすごい選手がいれば『なんでだろう』と思ってすぐにマネをすることができる。これってやっぱり才能ですね」

バットのメーカーを変えたワケ

さらに、大谷翔平は今シーズンから、昨年よりも1インチ(2.54cm)長い34.5インチ(87.5cm)のバットを使用している。重さは前年と変わらない32オンス(907g)。メーカーもアシックスからアメリカのチャンドラー製にスイッチした。

「チャンドラーは、昨年62本塁打でア・リーグの本塁打王、MVPになったヤンキースのアーロン・ジャッジが使っているバットです。

大谷選手はオールスター戦などでジャッジと会話しています。『どんな練習しているのか?』とか『どういうイメージで打っているのか?』とか聞いたと思います。

使っているバットを一気に2.5cmも伸ばすなんてことは普通、あり得ない。これまで短いバットで積み上げてきた実績をひっくり返すようなものですから。普通はもっと長さや重さを微調整するものです。でも、大谷選手は『別物の感覚』が欲しくなったのでしょう」

120キロのベンチプレスを軽々と

根鈴氏は、バットを持ち換えた背景には、昨年オフのさらなる肉体改造があったのではないかと話す。

「年輪のように1年刻みで計画的にフィジカルを上げていった。それに伴って、バットも持ち替えたと思います。

このオフの大谷選手は、120キロのベンチプレスが(ウオーム)アップだったと聞きました。そんな選手日本では見たことがない」

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「その強力な出力で去年のバットを振ったら、スイングは速いけど、ボールと出くわさない。大人がプラスチックバットを振るようになってしまう。

彼の体力なら、ボールとバットがいい角度で当たったらフルスイングしなくても100メートルくらい普通に飛んでいく。そこまで筋力がアップしたから、バットもシフトするべき時期だったということでしょう。それがドンピシャのタイミングだった」