アリババに続く高成長企業に育てようとしている

中長期的に、自動車の自動運転、教育、金融などあらゆる分野でAIの利用は増えるだろう。アームの半導体設計技術の重要性は高まる。そうした展開を念頭に、SBGはアームの上場を計画している。

4月下旬の報道によると、年内に、アームは米ナスダック市場への上場を目指している。株式の公開によって、80億~100億ドル(1兆1200億~1兆4000億円)の調達が目指されているようだ。

資金は、より高性能なAI対応チップの設計技術の向上、買収、半導体企業など世界のIT先端企業とのアライアンス強化などに再配分されるだろう。SBGはアームの収益範囲を拡大し、アリババに続く高成長企業に育てようとしている。それが現実のものとなった場合、SBGはアーム株を担保にするなどして資金調達し、先端分野での投資を強化するだろう。

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反転攻勢の孫会長が直面する課題

ただ、アーム上場によって資金を調達し、AI関連分野でのビジネスを強化するという成長戦略が想定された成果を実現するか否か、不確定な要素は多い。その一つとして、短期的に、世界経済の先行き不透明感は高まり、株価が不安定化するリスクは上昇しそうだ。

2023年6月の連邦公開市場委員会(FOMC)にてFRBは2023年中に、追加で2回の利上げを実施する考えを示した。エネルギーと食料品を除くインフレの高止まりは大きい。それは米国に限った問題ではない。ユーロ圏やカナダなど主要な先進国で価格変動性の大きい品目を除いた消費者物価は高止まりしている。

また、中国経済は高度成長期の終焉しゅうえんを迎えつつある。特に、不動産の投資減少は鮮明だ。建材や家電など多くの分野で過剰生産能力も深刻化した。5月、若年層(16~24歳)の調査失業率は20.8%、調査開始以来で最悪の水準に上昇した。そのため、世界全体で景気後退懸念は高まりやすくなっている。