「私の失敗」CEOらが語る解雇の理由
従業員の解雇は、もちろん業績が低下してきたからという理由だけではありません。コロナ特需によって、多くのテック企業が過剰な設備投資を行い、従業員を増やしてきましたが、コロナブーメラン効果とアメリカでの人件費の高騰、さらにドル高や広告費の減少などで、増やし過ぎた従業員を削減する必要が出てきたのです。
グーグルの親会社であるアルファベットのCEOサンダー・ピチャイは、解雇につながる不手際について、「過去2年間、我々は劇的な成長を遂げ、その成長に合わせて人材を採用してきたが、この決断(大幅な人員削減)はすべて私が全責任を負っている」とその不手際を公式に説明しています。
メタもまた、マーク・ザッカーバーグCEOが「マクロ経済の悪化や競争の激化などにより、収益が予想していたよりもはるかに少なくなる。これは私の失敗で、その責任を取る」と従業員宛てのメモで人員削減の理由を述べています。
ザッカーバーグはまた、「成長を楽観視して拡大し過ぎた」とも述べており、コロナ禍での安易な拡大が過剰で、そのためにコロナブーメラン効果によって人員整理を余儀なくされているのです。これはメタに限らず、多くのテック企業が直面している問題です。
「解雇人数13倍」は一概に“悪いこと”とは言えない
ビッグ・テックを中心に、22年にはテック企業の解雇人数は、前年に比べ13倍にも膨れ上がっています。
ただし、それが悪いことだとは一概にはいえません。というのも、解雇された技術者の実に80%以上が3カ月以内に再就職しており、給与水準も解雇前とほとんど変わらない、という調査結果(米人材サービス会社ジップリクルーター調べ)も出ているからです。
これらの技術者が、新たなスタートアップ企業や異業種に再就職、あるいは起業することで、ビッグ・テックとはまた異なる新しいテクノロジー分野が開拓されていきます。実際、従来のビッグ・テックとは異なる分野、たとえばAIやメタバース(仮想空間)といった新しい分野が台頭しつつあり、新たなプラットフォーム作りも進行しています。
テック業界で人材が循環すれば、次世代の新しいイノベーションが開拓され、広がっていく可能性も高いのです。