※本稿は、田中道昭『GAFAM+テスラ 帝国の存亡』(翔泳社)の第1章「GAFAMを襲うコロナブーメラン効果」の一部を再編集したものです。
テック企業にとってコロナは「特需」だった
2023年1月に、米ラスベガスでCES 2023が開催されました。新型コロナウイルスの影響で、前年はオンラインでの参加でしたが、今回はリアルで参加しました。このCESのいたるところで耳にしたのが、「コロナブーメラン効果」という言葉でした。
CESは、世界最大級のテクノロジーショーです。このCESも、2020年初頭に始まった新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックで、20年にはリアルで開催されたものの、翌21年は完全オンラインで、22年にはリアルとオンラインが半々で開催という状況でした。23年になって、ようやく私も3年ぶりにリアルでの参加となったのです。
このコロナ禍で影響を受けたのは、もちろんCESだけではありません。CESに出展している世界中のテック企業も、大きく影響を受けてきました。ただし、多くのテック企業にとってコロナは「コロナ特需」とも呼べるもので、巣ごもりやリモートワークの影響でハードやソフト、サービスなどの売上増に結びついたものでした。
「10万人の解雇」GAFAM凋落への端緒なのか
そのコロナ特需は、人々がウイズコロナに移行することによって、その反動とも呼べる「コロナブーメラン」となって返ってきたのです。
そのことを端的に表しているのが、2022年半ばから2023年初頭にかけてのリストラです。グーグル(Google)で1万2千人、マイクロソフト(Microsoft)社で1万1千人、アマゾン(Amazon)にいたっては1万8千人の人員削減が行われたのです。
もちろん、コロナブーメラン効果だけではなく、景気後退懸念による広告費削減の影響や、過大投資による余剰キャパシティー、顧客離れなどの問題もあります。しかし、22年のアメリカのテック企業では、合計で約10万人の人材が削減されているのです。これは前年比7.5倍にもなる数字です。
こんなところから「コロナブーメラン効果」という言葉が出てきたのでしょうが、米テック企業の代表であるGAFAMが軒並みレイオフを実施し、減益となっているのです。GAFAMの5社がそろって減益というのは、1年前までなら考えられなかったような光景です。
景気減速やサプライチェーン問題などの影響もありますが、これは世界のビッグ・テックGAFAMの凋落への端緒でしょうか――。