政策の隔たりも大きかった

そもそも、立憲と維新は政策的にも隔たりが大きい。

維新の主な政策は「身を切る改革」というスローガンに代表される、無駄を徹底的に削減するなどの行財政改革だ。対して立憲は、医療や介護、保育などのベーシックサービスを拡充するという立場をとっている。維新の政策を「さらなる格差の拡大や行政機能の低下などを惹起しかねない」(2022年参院選総括)と批判してきた。

多少荒っぽくなってしまうが、維新が「小さな政府」に近い考え方であるのに対し、立憲は「大きな政府」寄りの社会像を持っていると言えるだろう。

もちろん、政策の違いを埋める努力をしなかったわけではない。ことしの通常国会からは共闘するテーマを限定せず、重要政策についても意見交換を重ねていくことで合意した。

立憲が批判してきた「身を切る改革」をテーマにしたプロジェクトチームも両党で立ち上がった。旧公務員宿舎は、政府が使用をやめてから10年以上放置してしまっている休眠財産として問題になっていたが、これを合同で視察、国会の予算委員会で立憲の渡辺創衆院議員が「未利用の国有地は売却や貸し出しで資産化するべきではないか」と提言するなどした。

筆者撮影
2月7日に立憲と維新が立ち上げた「行政改革・身を切る改革プロジェクトチーム」が東京都新宿区戸山の休眠財産となっている旧公務員宿舎を視察した様子

「サル発言」を受けた維新は…

このように、通常国会前半まで関係を深めていった立憲と維新だが、立憲の小西洋之参院議員が衆院の憲法審査会について「毎週開催はサルがやること」などと発言したことを期に、改憲議論に前向きな維新が共闘を「凍結する」として暗雲が立ち込める。

ことし4月に行われた統一地方選では、維新が地方議員の議席数を約400から774まで伸ばすという大躍進となった。これを受け、馬場伸幸代表は次期衆院選で「289ある全選挙区に候補者を立てる」と宣言した。

勢いをつける維新に対抗する形で、立憲でも若手・中堅から泉代表に「競合も辞さず戦う覚悟と決意を鮮明に示すべきであり、最低でも200以上の選挙区で与党に対抗できる強力な候補者を擁立すべき」と提言がなされ、両党の候補者擁立合戦が始まった。こうして共闘関係は終焉しゅうえんを迎えた。

筆者撮影
5月8日に国会内で立憲の若手・中堅議員らが泉代表に「競合も辞さず戦う覚悟と決意を鮮明に示すべきであり、最低でも200以上の選挙区で与党に対抗できる強力な候補者を擁立すべき」などと書かれた提言書を手渡しする様子