銃所持を野放しにする米国社会の行方
銃の所持を厳しく規制し、銃による死亡者を年間数人程度に抑えている日本と、銃を事実上野放しにしてきた結果、銃があふれ、年間約4万人が銃で死亡している米国の状況を比較してみると、NRAの「人を殺すのは人であって銃ではない」という主張は間違っている、と言わざるを得ない。
なぜなら、銃の氾濫と銃撃事件の多さには関係があると思うからだ。人は激昂したり、恐怖を感じたりした時に銃が身近にあれば使いたくなるし、使ってしまうことが多い。それはこれまで述べた銃撃事件のケースからも明らかであろう。
銃には人を変える力があり、自分は弱い人間だと思っている人でも銃を持つと、強くなったように感じることが多い。これは「銃の扇情効果」と言われるが、筆者も30年前に米国で取材した際、実際に射撃場で銃を撃ってみて、そのことを実感した。生まれて初めて銃を手にしたので、最初はものすごく緊張したが、5発、10発と撃っていくうちに緊張はやがて快感に変わり、「西部劇のヒーロー」のような気分になったのを覚えている。
銃が身近にあれば使いたくなるのが人間の性なのかもしれない。だからこそ、事件を起こしそうな人の手に銃が渡らないようにするための身元調査の厳格化など、バイデン大統領と議会民主党が提案している「常識的な銃規制」が必要なのではないかと思う。
今後、米国の銃規制はどうなるのかを予想する上で重要になるのは、2024年の大統領選と議会選挙の結果である。もしバイデン大統領が再選され、上下両院とも民主党が多数派となれば、連邦銃規制法を制定しやすくなる。しかし、トランプ氏が再び大統領に返り咲くか、他の共和党候補が勝利すれば、銃規制を進めるどころか逆に規制を緩める可能性もあるため、銃問題は一層悪化することが予想される。