重税国家だと気づかせない巧妙な仕掛け

国民負担率の統計が始まったのは、1970年。以来、財務省は毎年発表を続けてきたが、まさか、50%に迫るなどとは夢にも思わなかっただろう。なにしろ、1970年は24.3%に過ぎなかったからだ。それが、今世紀に入ってから増え続け、2013年度に40%を超えてしまった。

国民負担率を減らすには、分子となる税金や社会保障の負担を減らすか、分母となる国民所得を上げるしかない。岸田首相は「新しい資本主義」を標榜し、「令和版所得倍増計画」を進めると言ってきた。しかし、具体的になにもしていない。

こんな状況では、諸外国なら抗議デモが起こり、政権は倒れているだろう。実際、2022年10月、英国はそうなった。しかし、日本ではデモはおろか、抗議の声すらわずかだ。なぜなのだろうか?

かつて私は『隠れ増税』(青春新書、2017)という本を執筆したが、そのなかで、次の4点を挙げた。

(1)税金が複雑かつ種類が多すぎること
(2)見えない税金があること
(3)公共料金を税金と考えていないこと
(4)源泉徴収制度があること

源泉徴収制度で税金の総額が分からない

(1)から説明すると、日本の税金は、国や自治体に納める税金(国税、地方税)だけで、50種類以上あり、これを全部知っているのは専門家しかいない。

(2)の見えない税金は、「たばこ税」「酒税」「自動車関連税」(自動車所得税、自動車重量税、軽油取引税など)「入湯税」「ゴルフ場利用税」「一時所得税」などで、はなから価格・サービスに上乗せされているので気づかない。

(3)の公共料金は税金の一種と考えるべきで、水道料金、電気料金のほかにNHKの受信料まである。

(4)の源泉徴収制度というのは、基本的な税金である「所得税」や「住民税」が、給与所得者の場合、毎月給与から天引きされてしまうこと。そのため、いくら税金を取られているのか、それが重いかどうかわからなくされている。また、この制度は徴収を会社がするので、事実上、会社が税務署の出先機関になっている。

源泉徴収制度は、アメリカ、英国、ドイツなどにもあるが、日本とは違っていて、最終的に自身で税を確かめて確定申告することになっている。