OECD38カ国の下から数えたほうが早い
ところで、OECDの数値は各国の通貨をドルに換算したもので、日本の場合、為替レートは2021年の平均1ドル109.8円で換算されている。そこで、為替レートを本稿執筆時点(2023年3月)の1ドル135円で換算してみると、日本の平均賃金は約3万3000ドルになってしまう。
2022年の記録的円安の1ドル150円で換算すると、なんと約2万9000ドルである。これだとポルトガルを下回り、OECD38カ国中31位まで順位は転落する。
一般的に賃金は、その国で平均的な暮らしができるレベルに合わせて、市場によって決まる。そのため、スタグフレーションが亢進すると、平均賃金ではまともに暮らせないことになる。
「内部留保を給料に還元せよ」は実現できない
これもすでにさんざん言われているが、なぜ、日本だけが賃金が上がらなかったのだろうか?
その答えは、いたってシンプル。それは、日本だけがほとんど経済成長をしなかったからだ。
経済成長は、人口の増加、労働生産性の伸び、イノベーションなどによってもたらされる。この30年間あまり、日本ではこの三つとも起こっていない。日本は人口減に陥ったうえ、労働生産性も伸びず、イノベーションも起こらず、ただ漫然と同じ日常を続けて、世界から取り残されてしまったのである。
給料が上がらない原因を、企業が内部留保を貯め込んで給料として還元していないからだという批判がある。たしかに、日本企業の内部留保は516兆円を突破し、異様な水準であることは間違いない。
しかし、内部留保というのは、賃金を含むすべての経費や税金を差し引いて得た利益で、これを投資に回さなければ企業は成長しない。日本企業の場合、国内での設備投資はそれほど増やしてこなかったが、その分、海外での設備投資や企業買収に資金を投じてきた。
つまり、内部留保とは、金庫や銀行に貯め込んだ現金のことではない。だから、内部留保で給料を払うことなどできない。