「課税して国民に分配する」は社会主義
内部留保に課税しろと言う政治家までいるが、そんなことをすれば、一般企業の場合は企業体力が大きく落ちるため、景気悪化時には大規模なリストラが発生するだろう。内部留保課税はたしかにできなくはない。しかし、それは節税目的で利益を貯め込んでいる特定同族会社のような会社に対して行うものだ。
この国では、お上が「稼いだカネは差し出せ。それをわれわれが国民に分配する」と常に言っている。そう考えざるをえない。これはもう「これ以上稼いではいけない」と言っているのと同じだ。
まさに、間違いなく社会主義である。
給料を上げたら減税するというトンデモ政策
なんとかして給料を上げたい。そうすれば、国民は喜び、選挙の票も獲得できる。そう政治家が考え、できてしまったのが、「賃上げ促進税制」である。
これは、企業が従業員の給料をアップさせると、大企業で支給額の最大20%、中小企業で最大25%を法人税から控除されるという制度だ。この制度は、2022年度の税制改正によって改正され、2023年からは控除率が大企業で最大30%、中小企業では最大40%に引き上げられた。
しかし、これもまたとんでもない制度である。こうすれば、たしかに給料は上がるかもしれないが、その原資は企業の利益ではなく減税だから、もとをただせば税金である。つまり、税金で給料の一部を補填しているのと同じだ。
これのどこが、本来の給料のアップだろうか?
「経済低迷の原因はデフレ」は間違っている
この国の政治家は、ほぼみな社会主義者である。とくに保守を自認している政治家は、自身の主張が資本主義市場経済に反しているとは思っていないようだ。
たとえば、2021年10月、当時、自民党で政調会長を務めていた高市早苗議員は、「私案だが、現預金に課税するかわりに、賃金を上げたらその分を免除する方法もある」と、企業の現預金に対してなんらかの税を課すことを提唱した。
こうした倒錯した考え方は、アベノミクスを支持した多くの政治家、官僚、専門家に共通する。その最たるものが、日本の経済低迷の原因はデフレにあり、デフレから脱却すれば経済は成長するというものだ。これは、原因と結果を取り違えた見方で、経済低迷の原因はデフレではない。
経済が低迷しているからデフレになるのであって、デフレを単にインフレに転じさせても経済は成長しない。