本来、賃金はどうやって決まるべきなのか

世界でも日本だけにしかない「春闘」があるせいか、日本人は、給料は労使交渉によって決まるものだと考えている。しかし、その考えは間違っている。労働者と経営者との交渉が賃金決定に影響を及ぼすのはたしかだが、それ以前に、企業が利益を上げていないかぎり、賃金は上がりようがない。

企業は、売上から売上原価を差し引いた「粗利益」(売上総利益)のなかから、賃金、利子、税などの支払いを行っている。この粗利益は、企業会計上において「付加価値」と呼ばれている。賃金の総額は、この付加価値の総額に左右される。

つまり、付加価値が多ければ賃金の総額を多くできるが、少なければ少なくせざるをえない。粗利益がマイナスになっている場合は、モノやサービスを売れば売るほど赤字(損失)が膨らむ状況なので、賃金を上げようがない。

また、市場全体の動向も賃金を決める重要な要素の一つだ。賃金も物価と同じで、需要と供給によって決まる。つまり、労働力が豊富に存在する市場では賃金は低くなり、その逆で、労働力が不足している市場では賃金は高くなる。人手不足の市場では、自然に賃金は高くなる。

政府が市場経済を歪めてはいけない

さらに、労働生産性も賃金を決める要素の一つだ。労働者1人に対しての付加価値額を労働生産性としているが、これが向上すれば賃金は上がる。労働分配率を一定とすれば、付加価値の増加分の一部が賃金に分配されるからだ。

山田順『日本経済の壁』(MdN新書)
山田順『日本経済の壁』(MdN新書)

労働生産性は、たとえばデジタル化を進めれば、仕事の効率がよくなって、労働生産性は上がる。

このように、賃金が決まるにはいくつかの要素があり、これらの要素が満たされないかぎり、賃金が恒常的に上がることはない。それなのに、日本政府は春闘に口出しをし、市場経済を歪めている。

企業によっては、首相の顔を立てて、賃上げに付き合うところもある。しかし、それは一過性であり、逆に弊害も大きい。

たとえば、ある企業が市場で決まる条件を無視して賃上げをした場合、当然ながら利潤は減り、長期的に見ると競争力を失って倒産する可能性があるからだ。

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