店舗スタッフがECを運営すれば問題は解決

まず、店舗スタッフ側の「店舗にお客さまが来なくなった」、企業側の「ECを強化せねば」という課題を解決するには、「店舗スタッフがECに立てばいい!」とひらめいた。

お客さまがリアル店舗に来ないのであれば、店舗スタッフがECでも接客できるようにすればいい。ただ商品画像が並んでいるだけのECではなく、接客の概念を入れればECの強化にもつながる。

また、店舗スタッフ側の「店舗の人員が削減される」、企業側の「店舗スタッフのリソースに余剰がある」という課題に対しては、「店舗スタッフの空いている時間をオンライン接客に使えばいい」と考えた。これなら店舗の人を減らす必要はない。むしろ、リアル店舗ならせいぜい1日数十人から数百人が精いっぱいだが、オンラインでは24時間365日、たった1人で何千人、何万人ものお客さまに接客できる。店舗スタッフの接客能力をネットの世界に開放し、拡張できるということだ。

図版=小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)より

ECの売り上げを店舗に還流させる

店舗スタッフ側の「給与が上がらない」という悩みに対して、企業の多くが「(お客さまが来ないのだから)給与は上がらなくても仕方ない」と考えている問題は根深いものだ。

でも、ここを解決しないと店舗スタッフにとっては「ECの仕事が増えるだけ」で、何の得もない。そこで、僕は「店舗スタッフがオンライン接客をし、それをきっかけにECでモノが売れたら、売った『個人』の評価にすればいい」と考えた。リアル店舗とECを比べると、ECのほうが利益率は高いことが多い。その分を店舗スタッフに還元する仕組みをつくれば、店舗スタッフは潤うし、企業側も損することはない。

この個人評価をベースにして、オンライン接客経由のECでの売り上げを「店舗評価」に使うことも可能だ。

そうすれば、店舗スタッフ側の「店舗売り上げがECに奪われる」という懸念はなくなる。お題目ではなく、「店舗とECどちらで買ってもらってもいい」と店舗スタッフの気持ちが切り替わることが、OMOの成功には不可欠だ。同時に、「不採算店舗を閉店させなければならない」という企業側の課題に対しても、EC売り上げを加味すれば多くの店舗を採算ベースに乗せることができる。