「新聞の見出しを取らせる選挙戦」に徹した維新

統一地方選の前半戦(知事選・政令指定都市長選・道府県議選)における維新の戦いを見て感じたのは「新聞の見出しを取らせる戦い方がうまい」ことだった。

多くの選挙が行われる統一地方選の場合、前半戦のメイン記事の見出しは「与野党対決型」となった知事選の結果になるのが定番だ。維新にとって最重要の選挙とは、当然ながら大阪府知事選・大阪市長選のダブル選だが、これは「維新2勝」がほぼ織り込まれており、有権者に大きな驚きを与えることは難しい。

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そんな状況下で維新は、奈良県知事選で新人候補を当選させた。自民党が分裂状態に陥り「漁夫の利」的な側面もあったが、知事選で唯一「与野党対決型」となった北海道が、自民党などが推薦する現職の勝利となったこともあり、奈良県知事選は新聞の1面トップに躍り出た。「維新が大阪以外で初めて知事選に勝利」という位置付けとともに「維新が伸びている」印象を、有権者に強く植え付けることになった。

「議席4倍増」の数字のマジック

同じく前半戦の道府県議選も同様だ。維新は大阪以外の関西圏で大きく議席を伸ばした一方、関西圏以外では神奈川(6議席)、福岡(3議席)を除き、議席を獲得した10道県はいずれも1議席止まり。にもかかわらず、新聞の地域面には「維新が初の議席獲得」との見出しが躍った。

「10→15」より「0→1」の方が「初議席」という見出しを立てやすい。結果として維新は「躍進している」という「ふわっとした印象」を与えることに成功した。

政治団体「大阪維新の会」を除く「日本維新の会」として獲得したのは69議席。前回(2019年)の16議席から53議席増え「4倍増」と言われた。もともとの議席数が少ない場合「○議席増」より「○倍増」と表現した方が、伸びの大きさが強調される。今回の選挙で185議席を獲得し、前回(118議席)から67議席伸ばした立憲民主党の場合「1.5倍増」ではインパクトが弱いということなのか、議席を増やしてもろくに見出しにもならない。