「全国政党化」にはまだまだ心もとない結果だった

一方、後半戦では衆参両院の五つの補欠選挙が、統一地方選の区市町村長選・同議員選と同時に行われた。大きな見出しになるのは、国政選挙である補選のほうだ。維新はここでも衆院和歌山1区補選に勝利。立憲民主党などが他の補選で自民党の候補に競り負けるなかで、またも大見出しを取らせた。

大阪以外に「足場」が乏しい維新が、メディアの特性を利用して、スポットライトの当たる戦いで成果を挙げ、勝利を実際より大きく見せる。それに乗っかる形でメディアも「維新躍進」を実態以上にあおる。これが、岸田政権が発足した直後の2021年衆院選以降の、政治をめぐる言論環境のトレンドだ。

維新にとってはこれも「空中戦」の一つであり、ここまでは一定程度、それに成功していると言えよう。

しかし、少し引いて選挙戦全体を見るとどうだろうか。

前述した通り、前半戦の道府県議選では、維新は関西以外では、昨夏の参院選で知名度のある元知事が出馬した神奈川を除けば、ほとんど伸びが見られなかった。東北や北陸などでは当選者はゼロ。当選者を出した県も、前述したようにほとんどが1議席であり、その多くが新人だ。そもそも1議席では、議会の中で会派を組むこともできず、地方政治のリアルパワーを形成するには、まだまだ地力が足りない。

「全国政党化に足掛かり」と呼ぶには、まだまだ心もとないのが実情だ。

地元大阪でも勢いは失速し始めている

後半戦の市区町村長選では、少々意外な結果もあった。維新の牙城である大阪で、政治団体「大阪維新の会」が擁立した市長候補が3人も敗退したのだ。高槻市では元衆院議員の新人、松浪健太氏が、4選を目指した現職にダブルスコア以上の差をつけられ惨敗。吹田市、寝屋川市でも新人が敗れた。維新は知事選と大阪市長選の「ダブル選」で勝利した勢いを、肝心の地元・大阪で生かしきれなかった。

維新がこの状態で次の衆院選を迎えるとどうなるか。

地方議員を増やして多少の地力をつけたとはいえ、現在の維新はまだ、関西以外では「空中戦頼み」の選挙戦に頼るしかない。確かに、このままメディアの「維新上げ」状態が続けば、その「追い風」を受けて、比例代表ではある程度の空中戦を戦える可能性はある。衆院選でも比例票で立憲を上回る可能性はないとは言えない。

しかし、衆院選でものを言うのは、議席数で大きな比重を占める小選挙区だ。そして、維新が自民党と立憲民主党などの野党陣営に挟まれた「三つどもえ」の状態から単独で勝ち上がるのは、実は相当に難しいと見るのが自然だ。