日本は既に「ギャンブル大国」

日本のギャンブル産業の規模はどれくらいか。

2022年のパチンコ・パチスロの売り上げは14兆6000億円。公営競技では、同年度の中央競馬で3兆2500億円、地方競馬1兆700億円、競艇2兆4100億円、競輪1兆900億円、オートレース1000億円――。すべて合わせると計22兆円超にも上る。

筆者が暮らす英国の街角にはスポーツ、政治、英王室まで賭けの対象にしてしまうブックメーカー(賭け屋)や小さなカジノがある。日本と単純に比較はできないものの、ギャンブルから犯罪を排除し、弱者を保護することを目的とした英「ギャンブル委員会」によると、宝くじを除くギャンブル収益(21年4月~22年3月)は総額99億ポンド(1兆6800億円)で前年より16.5%も拡大した。

日本では18年にギャンブル等依存症対策基本法が施行されているが、パチンコ・パチスロや公営競技にカジノも加われば日本は押しも押されもせぬ「ギャンブル大国」になる。

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依存症対策で入場制限などが実施される予定

大阪のIRは、大阪・関西万博の会場となる人工島・夢洲ゆめしまの約49万平方メートルに、電子ゲーム機約6400台が設置されるカジノ(約6.5万平方メートル)や3つのホテル(計約2500室)、国際会議場をつくる。初期投資額は約1兆800億円。年間約2000万人の来場と開業3年目で売上高約5200億円を見込み、収益の約8割をカジノが占めるとそろばんを弾く。

日本人のカジノ入場については、マイナンバーカードなどによる本人確認のほか、入場回数を7日間で3回、28日間で10回までと制限し、1回につき入場料を6000円徴収する予定。ほかにも、本人・家族の申請による利用制限や、未成年者や暴力団員の入場禁止の措置を講じる。場内のATM設置は禁止され、100万円超の取引はすべてカジノ管理委員会に報告され、チップの譲渡・持ち出しは禁止される。

大阪のIRを巡っては、依存症のほかに夢洲の地盤沈下による公費負担の懸念もある。大阪出身の筆者はカジノ推進派ではないが、日本の左派メディアは改憲派の維新が進める政策にはことごとく反対のように映る。海外のカジノで106億円を使い果たした大王製紙元会長、井川意高氏の例はあるものの、規制が行き届き、従業員が目を光らせるカジノは実は「最悪の賭博場」ではない。