世界最大のマーケットを無視できない

他方で、今回のマクロン大統領の訪中に当たり、フランスを中心とする欧州最大の航空会社であるエアバス社などの企業関係者の多くも同行し、中国の経済界と会合を持ったようだ。人口14億人を擁する中国が世界最大のマーケットである以上、良好な関係の構築・維持に努めたいというのは、欧州の経済界の偽らざる本音だろう。

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マクロン大統領の訪中に先立ち、スペインのペドロ・サンチェス首相もまた3月30日から2日間の日程で中国を訪問し、習近平国家主席と会談を行った。国交樹立50周年の節目として習近平国家主席がサンチェス首相を招待したものだが、両首脳はロシア=ウクライナ情勢に関する意見を交換し、経済関係の深化についても議論を行った。

この会談で両国は、スペイン産の柿とアーモンドの対中輸出に関して実質的な合意に達したと報じられた。2017年から協議していたこの問題だが、訪中したサンチェス首相に対する習近平国家主席からの「贈り物」といえよう。そのほか、エネルギーやインフラ関係を中心に、両国間での協力関係の深化について前向きな話がされたようだ。

人権問題を棚上げしても経済関係を深めたい

スペインを例に取れば、2022年時点において、スペインの貿易総額に占める対中貿易の割合は5.8%と、米国(5.7%)と肉薄している(図表1)。

出所=国際通貨基金(IMF)『多国間貿易統計』

とはいえ、対米貿易の割合は2021年まで4%台前半であり、2022年の急上昇は化石燃料の輸入急増という特殊要因がある。スペインにとって中国が重要な貿易相手国であることに変わりはない。

二国間貿易収支はスペインの輸入超過が定着しているが、スペインから中国への輸出も増えている(図表2)。

出所=国際通貨基金(IMF)『多国間貿易統計』

EUでは、基本的人権に代表される価値観を重視する欧州議会(立法府)を中心に、対中強硬論が根強い。とはいえ、EU各国の貿易・投資を考えるうえで中国の不可欠な存在でもあり、ここに一種の相反関係が生じている事実がある。