あの手この手で、安愚楽牧場への投資を正当化

ただ、安愚楽牧場に好意的な情報の発信源のほとんどは広告・宣伝絡み、もしくは、安愚楽牧場に実際に投資している人たちのコメントでした。すなわち、好意的な情報の多くは、明らかにポジショントークだったわけです。

そして、それには私も薄々気づいてはおり、好意的な情報に心地よく浸るも、そこには若干の後ろめたさも感じてはおりました。

そんな中、「26年間無事故(配当等の遅延等なし)」という客観的な情報を見つけたときは、宝物を発見した気分にもなり、大いに勇気づけられました。そして、安愚楽牧場は和牛オーナー制度「最大手」という、客観的情報にも大いに勇気づけられました。

また、すでに多くの和牛オーナー制度が破綻していたことには、「多くの和牛オーナー制度が淘汰されてきた中、今、安愚楽牧場が生き残っているということは、きちんとしたところだという証しだ」と、好意的に解釈するのでした。

さらに言えば、某有名マネー雑誌に広告が掲載されていたことには、「大手メディアの独自情報網を使って、相当厳密に調査しているはずだ」と、都合よく判断しました(実際のところは不明)。

すなわち、(安愚楽牧場に)都合の良い情報を集めるだけでなく、その状況を都合良く解釈するなど、とにかく、安愚楽牧場への投資を正当化するのに必死だったわけです。

写真=iStock.com/gahsoon
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直観で引かれてしまう、やっかいな「心のクセ」とは?

今回テーマの「心のクセ」とは、まさにこのことです。

すなわち、直観で引かれてしまうと(投資したいと思ってしまうと)、どうしても都合の良い情報ばかり目に入ってくるわけで、また、その状況を都合良く解釈してしまうわけです。逆に言えば、都合の悪い情報(解釈)はシャットアウトしてしまう、とも言えるでしょう。

無意識に、その投資を徹底的に正当化しようとするわけですね。

もっとも、それは今回の和牛オーナー投資(安愚楽牧場)に限らず、投資全般に言えることです。

とくに、直観で引かれた(ビビッときた)場合であれば、なおさらです。

なので、個別株式投資にこそ、この「心のクセ」には気をつけるべきかもしれません。

なぜなら、個別株式投資の場合、実際に当該銘柄(企業)の店舗や商品を実感・体感できるので、「このお店大好き」「この商品大好き」と、直観で惹かれやすい(ビビッときやすい)と言えます。

銘柄に惚れるな、との格言があるのも、うなずけるわけです。