聖書が英訳され、宗教改革につながっていく

同派の僧であるジョン・ボール(?〜1381年)は、フランスとの百年戦争中の臨時課税に反対し、イングランドの農民ワット・タイラーが率いる農民反乱の精神的指導者となりました。

ドイツ(神聖ローマ帝国)の一部だったチェコでは、ウィクリフの影響を受けた神学者ヤン・フス(1369ごろ〜1415年)が、チェコ語で説教をするようになり、教会を否定したために宗教裁判にかけられて処刑されました。フスを支持するチェコの人々は、ドイツ人に抑えられていたチェコ人の自由を求める運動と結びつき、信仰の自由を求めてフス戦争(1419〜1436年)を引き起こします。

茂木誠『世界と日本がつながる 感染症の文明史 人類は何を学んだのか』(KADOKAWA)

神聖ローマ皇帝は鎮圧のために十字軍を5回も派遣しましたが失敗し、信仰の自由を認めるかたちで和約を結びました。フス派の一部はドイツに逃れて「ボヘミア兄弟団(チェコ兄弟団)」を組織し、その影響を受けたイギリス国教会のジョン・ウェスレー(1703〜1791年)がメソジスト派を組織することになります。

ウィクリフやフスの思想は異端として弾圧されましたが、その後、16世紀に宗教改革の火蓋を切ったマルティン・ルター(1483〜1546年)に大きな影響を与えました。

ルネサンス美術、ルネサンス文学、宗教改革、科学革命、ロマン主義――ひと言でいえば「西欧近代」そのものが、14世紀の黒死病パンデミックの余波として始まった、ともいえるのです。

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