確たる正解がわからない世界で変化を恐れてはいけない

アプローチが違っても、結果が同じであれば、それも1つの答え。決して誰かに教えを請うことを否定するつもりはありませんが、洞察力を研ぎ澄まし、想像力を働かせて、自分で自分なりの答えを見つけていくのも、僕にとっては楽しい作業なのだと思います。

振り返ったとき、この馬乗りとしての考え方の変化が僕にとって大きな転換期だったわけですが、人によっては、今までのやり方を大きく変えるとき、どうしてもリスクにとらわれて一歩を踏み出せないケースもあると思います。

でも、技術にしろ思考にしろ、自分が変化することに対する怯えは僕には一切ありません。

なぜなら、確たる正解がわからない世界だからです。

もしかしたら、どの競技も同じなのかもしれませんが、長い長い歴史を持つ競馬界も、確たる答えがわからないままここまで歩んできた世界なのです。

そうであれば、よりよいものを求め続け、模索し続けていくのが僕らの仕事。実際、毎週どころか毎レース、あらゆる試行錯誤を繰り返しています。

どんな立場になろうと、常に変化を求めていくのは当たり前であり、むしろ変化していかなければなりません。

これから先もずっと、僕は変化を恐れないジョッキーでありたいと思っています。

何か1つを大きく変えるのではなく、少しずつ自分を新しくしていく

「お前が乗ると馬が壊れる。うちの馬は、そういうふうには作ってないねん」

松田先生(松田博資厩舎きゅうしゃ・調教師)のその言葉をきっかけに、それまでとは違う発想を得た僕は、馬に対してもレースに対しても、徐々に新しいアプローチを試みるようになりました。

何か1つを取り出して、そこだけを大きくガラッと変えたわけではありません。パートナーである馬に対し、「何を考えているのかな」と気持ちを探ることから始まり、細かいコンタクトの取り方や動かし方、レースの組み立てに至るまで、少しずつ新しい自分を積み上げていきました。

本当に日々の積み重ねの結果なので、どのくらいの期間でシフトチェンジできたのか、明確な期間はわかりません。

でも、気づいたときには、松田厩舎のほぼすべての馬を任せてもらえるようになっていました。

「将雅でええか」ということだったのか、はたまた「将雅がいい」と思ってくれたのか、松田先生のお気持ちはわかりません。

なにしろ、「お前に任せる」などといった直接的な言葉は、一度ももらったことがないからです。