「ほぼ全会一致」となった決議が示すもの

憲法は国会議員の除名について、出席議員の3分の2以上の賛成を必要としている。過半数ではなく「3分の2」なのは、政治的立場を異にする与野党が、党派を超えて「除名が必要」との認識で一致する、つまり「そのくらい酷いケースでなければ除名すべきではない」ということだ。

今回のガーシー氏の場合、参院は国会法にのっとり、時間をかけて相当慎重に手続きを踏んだ。本会議でも除名への反対票は1票だけ。多くの国民が除名の妥当性を、比較的無理なく理解しただろう。

だが川上氏のケースは、国会でのごく普通の言論活動が除名の対象となった。議会の反応もガーシー氏のように「ほぼ全会一致」というものではなかった。除名処分を決めた衆院本会議では、共産党のみならず社会党議員からも「主義主張に基いての発言は十分に許されなければならぬことは、民主政治、議会政治の要請であります。これを圧迫することは、百害あって一利がありません」との反対討論が行われた。除名への反対票は71票もあった(賛成は239票)。

ガーシー氏は二重の意味で民主主義を毀損した

現在は衆院での小選挙区制度導入の影響もあり、政権与党が巨大化しやすくなっている。与党だけで3分の2を押さえることも難しくなくなり、与党は野党の反対を気にすることなく、独善的な国会運営が可能になっている。もはや「3分の2」という数字は「与野党が党派を超えて同じ認識に立てる」という意味を失いつつあるわけだ。

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もちろん筆者も、ガーシー氏の除名を機に、すぐに除名が連発されるような国会になるとは思っていない。しかし「政権与党が気に入らない野党議員に照準を定め、除名の可能性をちらつかせて批判の矛先を鈍らせる」ような振る舞いが、今後全くないとは言い切れない、とも思う。

ガーシー氏の「罪」は、単に自らが国会をサボり続けたことだけではない。「国会議員の除名」という、永遠にお蔵入りさせておくべき手続きを国会に「使わせてしまった」ことによって、前述したような懸念を膨らませてしまったことにもある。

ガーシー氏は二重の意味で民主主義を毀損したのだ。