皇室が近親結婚に神経質になる理由
どうして、私がこの話を言い出したかといえば、小泉内閣の皇室典範改正議論のときにさかのぼる。そのころ、篠沢秀夫さん(学習院大学教授・仏文学者)などが、盛んに眞子さま、佳子さま、愛子さまと旧皇族男子を結婚させたらよいという提案をしていた。
私はそれに対して、皇室は近親結婚には否定的なので可能性は低いと反論していた。皇室では、近親結婚の弊害にはかなり神経質であり、大正天皇から今上陛下に至るまでのお妃選びでも、血統的に近い女性は避けられてきた。皇族や元女性皇族でお子様が生まれておられる率が平均より低いのは、過去に近い血縁の結婚が多かったことと関係があると危惧されているからだ。
そうすると、旧宮家のうち北白川、朝香、竹田、東久邇は明治天皇の子孫であり、東久邇家はさらに昭和天皇の子孫、久邇家は香淳皇后の実家であるから、皇位継承候補としては好都合だが、内親王さま方との縁組みの可能性は小さい。
11宮家のうち、可能性があるのは賀陽家だけ
ほかの宮家で、内親王である眞子・佳子・愛子さまと適齢の男の子がいるのは賀陽家だけだった。
しかし、2人の少年と幼い内親王さま方を将来の結婚相手として想定する議論はどちらにとっても気の毒だから、やめたほうがよいと申し上げていた(佳子さまは兄弟の兄の1歳年上だから、こちらも可能性はある)。
当時は「この縁組みが実現したら……」と期待を持った人もいたが、私の説明で当てにしてはいけないという趣旨を納得された。また、もし実現したとしても、現在の皇室典範で皇位継承者と定められている悠仁さまの後が続かなかった場合に、子孫が継承候補者になるという話でしかないことがコンセンサスだった。
元NHK記者の岩田明子さんが文藝春秋に連載している手記に、安倍元首相が一昨年あたりに愛子さまと旧皇族男子との縁談をまとめたいと張り切っていたという記述がある。このときに、安倍氏の念頭にあったのが賀陽兄弟であるのは間違いないが、その後、具体的に動きがあったという話は承知していない。