親として味わう大きな挫折感

このように、子どもを保護された親は、さまざまな体の不調(不眠、過労、食欲不振など)を来たすことも少なくありません。そして、最大の問題は心の不調です。「子どもを傷つけるという親として最大の失敗をしてしまった、大きな挫折をした自分」「人として認められない、許されない」という自己否定の感情が湧き上がるのです。

混乱、怒り、挫折、裏切り、不信感、パニック、落胆、困惑……。

これらのさまざまな感情が混在して、どうしたらいいのかわかりません。まるで頭がフリーズしてしまったかのようです。子どもを保護された時の記憶が思い出せない、と言われる方もいます。

怒りや無視は自分を守る「防衛反応」

宮口智恵『虐待したことを否定する親たち』(PHP新書)

咲希さんの場合は、「勝手に連れて行くなんて、ひどい! 早く返してほしい」と戦闘モードになり、児相担当者を怒鳴りつけました。それに対して担当者は「私は判断できません。お伺いしたことを、児童相談所として検討してまた連絡します」と返答。それが「事務的な役所言葉」に聞こえ、自分の訴えが全く届いていないように感じ、彼女の怒りはよりヒートアップします。

また、別の親は、保護という最大の危機の状態で、児相から電話がかかってきた時、その着信番号を見て、電話に出ることがどうしてもできなかったといいます。電話に出なければいけないと思うのですが、また何か間違ったことを言って取返しのつかないことになったらと怖くなり、そのままスルーすることを繰り返してしまった。気づけば、現実から逃げてしまっていたのです。

このように、保護というストレスフルで想定外の事態から自身を守るために、親にはさまざまな防衛反応(闘う・逃げる・固まる)が起こります。

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