1玉10万円のキャベツを買う人はいない

この例では、証券マンが値下がりする銘柄を勧めてしまったことが直接の原因ですが、いちばんの問題は何よりも重要な「その株はいくらであるべきか」ということを自分で考えずに買うという判断をしてしまったことです。

たとえば「このキャベツは最高においしいので買ってください」といわれたとします。最高においしいキャベツだと、ぜひとも買って食べたいところですが、もしそれが1玉10万円だったとしたらはたして買うでしょうか?

買いませんよね。じゃあ30円だったらどうでしょう。

それだと買いです。

では300円だったら?

買わない人もいたり、ちょっと考えてもいい、という人もいるというところでしょうか? 生産方法や産地、つくり手などを確認しなければ、という人もいるでしょう。

これら、おのおのの適正価格を決める作業はプライシングと呼ばれます。キャベツなら、みなさんこれくらいの精緻なプライシング(値決め)はごく一般的にしているでしょう。

つまり、プライシングとは買う対象の値段に対して、知識と自分の意見がちゃんと背景にあることをいいます。ここで重要なのは、300円のキャベツを買う人も買わない人もいるように、あなた自身のプライシングに、自分の価値観が反映されるべきだということです。

ところが株の話になると、言い値で買うというとんでもないことをする人が突然増えます。「とてもおいしいキャベツ」といわれて、値段を考えずに1玉10万円で買うようなものです。

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金融リテラシーが低い人が投資に持っている思い込み

このように、知識と自分の意見が背景にあるプライシングは、とても重要です。こんな値段でキャベツを買うお客さんを探すことは極めて困難です。しかし、株の世界では比較的簡単です。

それは金融リテラシーが低い人がいるからです。

実は金融リテラシーが低い理由のひとつに「投資というものはお金を増やすものだという思い込み」があります。どういうことでしょうか。

キャベツを買うときに値段に慎重になるのは、それが「確実にお金が減る行為」だからです。大事なお金を減らしてキャベツを買うのですから、むだ遣いはしたくありません。

ところが、投資というのはもちろん「今のお金をもっと増やそうとする行為」です。

お金を増やすためにやっているのですから、キャベツを買ってお金が減るのとは違います。いつもとガラリと違うことをするべきだと思っているのです。

しかし、キャベツを買えば必ずキャベツが手に入りますが、投資に失敗して値下がりした株を売れば、「お金が減っただけでなにも得るものがない」という状況に陥ります。