都内30カ所で違反が常態化している

ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。

1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。

それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう。

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6年間で保育事故は3.5倍に

保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。

配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。

保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。

2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった。