腎臓は、一度悪くなると良くなることはない

人間は腎臓1つあたり約100万個、計200万個のネフロンを持って生まれてくる。

「加齢あるいは糖尿病や高血圧などが原因で糸球体が詰まってしまい、数が減っていきます」

現時点でネフロンの残存数を計測することは不可能である。高田によると人によって差異があり、生まれつき少ない場合もあるという。その場合は残っているネフロンに負荷がかかっていることになる。

このネフロンの特徴は“不可逆性”であることだ。減ってしまえば、元に戻ることはない。長生きすればするほど、腎臓の機能は確実に落ちていく。我々ができることは、その下りを緩やかにすることだけだ。

「腎臓に負担をかける要因としては、まず塩分の取り過ぎ。日本人の塩分摂取量は1日10グラム(男性11グラム、女性9グラム)とされていますが、腎臓の病気の方には6グラム以内と指導しています。タンパク質の摂り過ぎにも気をつけなければなりません。

タンパク質は、ろ過されるとき、ネフロンに負荷をかけてしまう。若い人は問題ないんですが、腎臓の悪い高齢者が(サプリとして)プロテインを摂っていると注意が必要。大切なのは水分を多く摂ること。

エアコンの効いた部屋は非常に乾燥しており、水分が不足しがちになります。脱水状態になると血液が濃くなって、腎臓への流れが悪くなってしまうんです」

体重によって必要な水分量は変わってくるが、1日2リットル以上が1つの目安となるという。

原因不明の体重増なら腎機能低下の可能性も

腎臓は沈黙の臓器ではあるが機能低下の兆候はある。むくみ、急激な体重増だ。

「靴下の跡がつきやすい、足のすねの部分をぐっと指で押して、跡が残ったら、注意が必要です。食生活に大きな変化がないにも関わらず、1カ月で1キロ、2キロ増えていたら、体内に水が溜まっている可能性もあります」

医療現場ではeGFR(推定糸球体濾過量)という数値が使用される。これは1分間あたり糸球体でろ過される血液量のことだ。年齢と血清クレアチニン値から算出する。

「正常値は100。そこから下がっていきます。患者さんには100点満点で自分が何点かと考えてくださいとお話ししています。慢性腎臓病と呼ばれるのがだいたい60以下です」

30を切ると尿毒症の症状が現れる。15未満は「末期腎不全」に区分され、透析療法、あるいは腎臓移植の準備に入る。

透析療法は、人工透析とも呼ばれる。血管に機器をつないで、腎臓の代替とするのだ。大量の水を必要とする人工透析の機器はかさばり、1回あたり4時間ほどかかる。患者にとって大きな負担だ。