会社によって必要な知識が違う

華やかな成功を収めた企業の事例を学んだり、マーケティングのスペシャリストに来てもらったりしても、マーケティングチームが期待するほど機能しない……それは、なぜなのでしょうか。かみ砕くと、理由は2つあると思います。

1つ目は、会社によって必要な知識や判断のリテラシーがかなり違うことです。そもそも業種や事業フェーズが違い、さらにいえば強みも違うので、各企業で一律に有効な考え方や手法がないのです。

事業フェーズだけでいっても、売上規模のイメージとして0→1の立ち上げフェーズの会社と、1→10の成長フェーズの会社、さらに10→100の大規模化や複合事業展開を目指す会社を比べると、マーケティングに必要な知識はどんどん拡張し変容していきます。

成熟した大人のための服を、成長期の中学生が着こなそうとしても無理な話ですが、そんなことがこの領域では戦略や手法、ツールなどさまざまな点で頻発しているのです。自社の業種特性や事業フェーズ、また組織特性にフィットする方法を探すのが大前提なのに、その発想が抜け落ちてしまいがちです。実績ある有名なマーケティング人材であっても、事業フェーズの経験や強みには偏りがあり、招聘してもミスマッチという場合もあるため注意が必要です。

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エースが1人いても成果は上がらない

2つ目は、メンバー間で知識レベルに差があるとうまくいかないことです。ツールとスペシャリストを入れても機能しないことがあるという話にもつながりますが、マーケティングはチーム戦なので、ひとりだけ豊富な知識があってもほかの人の知識が乏しいと成果につながりません。

戦略ももちろん重要ですが、それを戦術に落とし込み、細かい施策に分解して実行しきって初めて成果を期待できるので、細かい業務とオペレーションの積み重ねだともいえます。

マーケティングがチーム戦である以上、チーム全体のレベルが上がらないと、期待するような成果を得にくいという構造があります。サッカーに例えれば、エース級のミッドフィルダーひとりがキラーパスを出せても、決定力のないフォワードと防御力のないディフェンス陣では試合に勝つことはできません。

そうした問題を解決できるように、あまりこれまで語られてこなかった「自社の事業フェーズに合ったマーケティングの考え、チーム、人材育成」を、次章以降で体系立てて解説していきます。