背景にあるのは「不信」ではなく「無関心」
私は、その背景に「メディア無関心」があるのではないかと思う。もはやニュースの情報源、媒体など気にしないという人が増えているのだ。
「新聞離れ」をめぐっては、「メディア不信」をその原因に挙げる人がいる。デジタル化によって誰もが発信できるようになったことで、マスメディアの情報が嘘であったり、偏っていたりすることが明らかとなり、誰も買わなくなっていった、という主張だ。
しかし、それは根拠に欠けると言えるだろう。ジャーナリズムやメディアに関する調査、研究をしている「新聞通信調査会」が2022年8~9月にかけて5000人を対象に実施した「メディアに関する全国世論調査」によると、各メディアの信頼度を100点を上限に評価してもらったところ、新聞は67.1点と、首位のNHKの67.4点に次いで高く、一方でインターネットは48.9点と50点を下回った。
要するに、一般的に新聞はインターネットの情報よりも信頼できると評価されている。しかし、それでもネット上では新聞からの情報にお金を払ってもらえないのである。
半数以上がニュースの出所を「気にしない」
信頼されているにもかかわらず、いったいなぜお金を払ってもらえないのか……。
その理由を示すもう1つのデータがある。「インターネットニュースを見る時に出所を気にするか?」という問いに対して、「いつも気にする」が12.2%、「まあ気にする」が34.1%、「あまり気にしない」が39.2%、「全く気にしない」が14.5%となり、半数以上の53.7%がニュースの出所を気にしないと答えたのである。(「メディアに関する全国世論調査」より)
多くの人たちはインターネットよりも新聞の情報のほうが信頼できると思いながらも、ネットニュースを見る際にはどういったメディアから情報を得ているのか出所を気にしない。無料の情報の中から世間で起きていることについて何となく知ることができれば満足してしまう。つまり、メディアに対して不信感があるというよりも、メディアに対して関心がないのである。
ニュースの出所を気にしないのであれば、信頼度の高い新聞からの情報を、お金を払ってまで読もうとしないことは当然だろう。これが、私が新聞衰退の理由を「メディア無関心」と考えるゆえんである。