その半面、オスマン帝国の崩壊はトルコとギリシャの領有権争いを招き、ロシア帝国の崩壊後はバルト海から太平洋まで広範囲で紛争が起きた。ドイツ帝国崩壊は第2次大戦につながったと言えるかもしれない。

ロシアの残党が分離主義国家と戦うと悲観論者は指摘するだろう。ロシア軍はウクライナでの敗北で弱体化し複数の戦線では戦えないと楽観論者が反論すれば、悲観論者はロシアの核兵器に言及する。

双方の意見が唯一一致するのは、ロシアには大規模で重装備の民兵組織が存在する故に、内戦が起きる可能性だ。

結局、西側の政策もプーチン自身も崩壊は止められない。ロシアの体制危機の根は深い。ロシアを不安定にし、崩壊のきっかけをつくった張本人がプーチンなのだ。

それでも西側はロシア崩壊に備えるべきだ。かつて死にゆくソ連を救おうとしたように近隣国よりもロシアのニーズを優先するようなことがあってはならない。

バルト海沿岸から中央アジアまでロシアと国境を接する国々が安定を維持し「防疫線」を形成できれば、ロシア国内で何が起きてもそれを封じ込めることができる。

プーチン帝国崩壊の余波を最小限にとどめるには、ウクライナに対して、ゆくゆくは解放されたベラルーシやカザフスタンなどの重要な国に対しても、強力な支援を続けるに越したことはない。

From Foreign Policy Magazine

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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