「子ども手当はバラまき」かつて自民党は批判したが…
いつでも子どもを産める社会に変えるには、やはり経済問題が大きい。
民主党政権が「子ども手当」を導入した時、「子どもは社会全体で育てる」のだと説明していた。家庭の経済力に関係なく、生まれてきた子どもには一定水準以上の生活と教育を受けられるよう保証する。そうした発想が重要だろう。
働くお母さんのためにベビーシッター代を必要経費として所得控除するというアイデアが2015年に厚労省から出されたが、自民党内の反対で頓挫したことがある。これに代わってベビシッター利用支援事業として助成金が出されるようになったが、まだまだ十分ではない。簡単なのはベビーシッター代から教育費まで子どもにかかる費用はすべて全額所得控除の対象にすることだ。
ところが、経費の所得控除にすると経費を使える富裕層が有利になるという反対論が必ず出てくるのだ。ベビーシッター控除が頓挫したのも、ベビーシッターを雇えるのは豊かな家庭だけだ、という反対論があったからだ。
そうした「金持ち優遇」に配慮してか、児童手当も所得制限が付されている。だが、これは「少子化対策」と「所得再分配」をごっちゃにした考え方だろう。少子化対策として行うならば、所得に関係なく、子どもにかかる費用を控除するべきだ。低所得層への支援は別の枠組みで行えばいい。
少子化対策は何はともあれ、出生者数を増やすことに直結しなければ意味がない。ここへきて、自民党内からも児童手当の所得制限を撤廃すべきという意見が出ているが、民主党の「子ども手当」をバラまきだと批判した自民党が主導して導入したものだ。
「これで異次元なのか」各省庁案の寄せ集め
岸田首相は1月4日の年頭の記者会見の冒頭でこう発言した。
「本年も覚悟を持って、先送りできない問題への挑戦を続けてまいります。特に、2つの課題、第1に、日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動する。第2に、異次元の少子化対策に挑戦する。そんな年にしたいと考えています」
「異次元の少子化対策」をやると大見えを切ったのだ。
どんな具体策が出てくるのかと注目していたが、1月23日の所信表明演説ではまったく内容に乏しかった。「何よりも優先されるべきは、当事者の声」だとし、「まずは、私自身、全国各地で、子ども・子育ての『当事者』であるお父さん、お母さん、子育てサービスの現場の方、若い世代の方々の意見を徹底的にお伺いするところから始めます」とした。いつもながらの岸田流と言えばそれまでだが、まずは話を聞くところから。
少子化問題は今に始まったことではない。実行が求められる首相になって1年が過ぎても、話を聞くところから始めなければならないほど知見が足らないということなのか。
具体的な施策がうかがえるものとしては、「高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入」「各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫」「6月の骨太の方針までに将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を示す」といった程度で、各省庁の担当者が出した文章を寄せ集めた印象だ。「これで異次元なのか」と批判の声が上がるのも当然だろう。