「6月までに」では遅すぎる
政府は20年にわたって少子化対策を「課題」に掲げてきた。民主党政権時代も含め、多くの政治家が「少子化担当大臣」の肩書を名乗った。だが、出生数の減少が一向に止まらない現状からすれば、それらの政治家はすべて大臣失格だったということになる。
では、岸田首相は少子化対策に本気で取り組むのか。
首相は施政方針演説の中でこう述べた。
「昨年の出生数は80万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています」
少子化によって社会機能が維持できなくなるという、とてつもない危機を語っていたにもかかわらず、語り口からは危機感を感じることができなかった。語った危機感が本物ならば、「6月の骨太の方針までに」などといった悠長なことは言ってられないはずだ。
6月に方針を決めても具体的な法案を作って審議するのは早くて秋。どんなに急いでも法律の施行は2024年だ。その政策が効果を上げて少子化に歯止めがかかるとしても、さらに数年の時間がかかる。
時間を浪費している間に日本社会が回復不能なまでに機能不全に陥らないことを祈るばかりだ。