出産がハンデにならない社会をつくるべき
しかも、こうした構造的な晩婚化は、今後ますます進むことはあっても解消するのは難しい。企業が求める人材が高度化すれば、大学院で修士を終えるのが普通になってくるだろう。すでに海外ではMBAのみならず博士号を持ったビジネスマンが大きく増えている。グローバルに競争する人材ほど、20代は猛烈に忙しく、就職しても、あっという間に30歳を超えてしまう。つまり、結婚・出産のタイミングを逸してしまいかねない環境なのだ。
もうひとつ、晩婚化が少子化に直結してしまうのも、今の日本社会のあり方に起因している。正式に結婚しないと子どもを産めない社会と言ってもいい。フランスのように婚外子が増えればいい、とまでは言わないが、海外で見られるように、就職していない学生が結婚して子どもを産み育てることのハードルを、日本社会でももう少し引き下げることができれば、晩婚化も少子化も解消されていくかもしれない。
いずれにせよ、若くして結婚し、子どもを産むことがハンデにならない社会を築くことが本当の意味での少子化対策だろう。いつでも子どもが産める社会にすることだ。
「終身雇用」「年功序列」を廃止する
まずは、日本の雇用制度を大きく変えていくことだろう。新卒一括採用を止め、いつでも入社できる仕組みに積極的に変えていく。
そのためには、すでに多くの会社が見直しを迫られているが、終身雇用・年功序列の賃金体系も変えなければならないだろう。年齢に関係なく能力次第でポストを得られるようにすれば、出産でブランクができても待遇で不利になることはない。あるいは、先に出産してから就職するというキャリアパスがあってもいい。仕事と出産を天秤にかけなくても良い社会システムに早急に変えていくことが必要だ。
これはもっぱら人材を雇用する企業側の姿勢に負うところが大きい。岸田文雄内閣は2022年6月にまとめた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で、「労働移動の円滑化」を掲げた。岸田首相の本気度はともかくとして、これまでの企業に雇用を抱えさせることを後押しする政策から、より生産性の高い企業に労働移動させる政策へと方向転換する姿勢を見せている。そのためにはいつでも入社できる雇用制度の整備が不可欠になる。
企業も出生数の急激な減少を目の当たりにして、危機感を覚えている。従来の新卒採用だけでは人員を充足できないうえ、労働移動が当たり前になりつつある中で、せっかく採用した若者に転職されてしまうリスクをヒシヒシと感じ始めている。雇用制度が大きく変わっていく素地はできつつあると見ていいだろう。ここで政府が本気になって労働規制などを改革すれば、変化が起きる可能性は十分にある。