個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする立法を行う場合、養子縁組の成立に向けた様々な準備は、皇室典範により養子縁組が禁止されている状況の中で行わなければならないこととなる(33ページ)
権力分立や、国家に対する国民の自由・平等の確保という観点から、法律は一般性(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用されること)を有していなければならないとする考え方もあり、このような個別処分的立法は難しいとの考え方もあるのではないか(同ページ)

要するに養子縁組プランは、恒久制度でも期間限定でも個別対処でも、いずれも問題があるという指摘だ。これらは、事務局という立場上の制約の中でもぎりぎり示された“ダメ出し”と受け取るべきだろう。

専門家による絶望的な試算結果

以上によって、旧宮家プランが現実的な選択肢になり得ないことは、明らかだ。

そうすると、これまでの皇室典範における「男系男子」限定というルールを維持する限り、次の世代は悠仁殿下だけという事態を避けられない。それを前提に皇室の将来を予測すると、果たしてどのような未来図を描くことができるだろうか。

先頃、都市社会工学が専門で京都大学大学院准教授の川端祐一郎氏が、「男系男子」限定という条件下での皇位継承の持続可能性を探った興味深い試算を公表されている(『表現者クライテリオン』101号、令和4年[2022年]3月号)。

同氏は「結婚する確率は90%とし、結婚年齢の平均は30歳、第1子をもうける年齢の平均は32歳、平均寿命は81歳」という条件を前提に、スタート時点での「男系男子」が1人・3人・5人で、さらに平均したお子様の数が1.5人・2人・2.25人・2.5人というケースのさまざまな組み合わせについて、丁寧に試算された(それぞれ1万回ずつ数値シミュレーションを行われたという)。

しかし、先に見たようにスタート時点の「男系男子」は1人、お子様も1.2人プラスアルファというのが現実的な見立てだろう。そこで川端氏の試算から、スタート時点が1人で、お子様が1.5人の場合について取り上げる。

すると、100年未満しか持続できない可能性が“61.4%”で、最後の男系男子が亡くなり、男系に限定した皇統が途絶える可能性が最も高い年は2086年という計算結果になっている。

これは、スタート時点の男系男子について、一般的に「90年代後半から00年代後半にお生まれになった現皇族及び旧宮家の男系男子を想定している」ため、具体的に悠仁殿下を想定した場合よりも少し前倒しされた結果になっている。しかし、その点は差し引いても、極めて厳しい結果であることは揺るがない(200年未満の可能性は90.2%!)。

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