聞き手の期待を裏切らない
早速ですが、雑談の中でこんなふうに話が展開していったら、あなたはどう感じるでしょうか。
「タバコって口は臭くなるし、煙も出ますよね。それに価格も高くなっていますよね……」
こう聞くと、あなたはつい、「分かるよ。タバコって本当にイヤですよね」と相槌を打ちたくなるでしょう。
しかし、そう口にした瞬間に、話し手がこう続けたらどうでしょう。
「でも、やめられないです」
「タバコはイヤなものだ」と賛同した自分の相槌が、途端に気まずくなります。
多くの人は、相手の話に共感したい、相手を理解したいと思いながら話を聞いています。話し手の内容に感情を寄り添わせながら耳を傾けているのです。
それなのに、会話の最後で、これまでの文脈とは異なる結末になると、聞き手はまるで期待を裏切られたように感じるはずです。
裏切られたとまではいかなくても、きっと頭の中は混乱しているでしょう。話し手の意図を理解できなくなり、うまく返事ができないかもしれません。
こんな会話は気まずいですよね。だからこそ、聞き手を裏切ることのない「会話の流れ」を意識してもらいたいのです。
会話の最初から聞き手が素直にうなずけるような形でキャッチボールを重ねて、聞き手の期待を裏切らない流れで終わっていく。これだけで、「誤解」は大幅に減るはずです。
タバコって口は臭くなるし、煙も出ますよね。
それに価格も高くなっていますよね……。
でも、やめられないんです
OK
タバコがやめられないんです。
口は臭くなるし、煙も出るし、価格も高くなっているのに……
会話の最中、お互いに共通認識に立っていることが確認できるだけでも、会話は意外と楽しくなるものです。であれば、期待を裏切ることなく、共通認識を増やして互いの理解を深めていきましょう。
「寒いですね」
「そうですね」
「春が楽しみですね」
「分かります」
「暖かくなったらランニングを再開したいと思っているんです」
「運動は気分転換にもなりますよね」
そんなキャッチボールが成立するだけでも、互いの理解は深まっていきます。そうすると、「ああ、話して良かった。気持ち良いな」と思えるようになるのです。
今の会話がどこに向かっているのか。話題を明確にして、キャッチボールを重ねること。話し手と聞き手の間に、会話の足場をしっかりと築いてあげること。
それが話の「内容を磨く」ことだとすれば、そんなに難しくはないと思いませんか。