できる範囲で一生続ける、新しいことを始める

現在は年金も少ないですから、何か新しい仕事を始めることも1つの選択でしょう。金銭的な面だけでなく、老化を遅らせるという面から見ても、退職後に、また新しい職場で働き始めるのはとてもいいことです。

臨床心理士になって第2のキャリアを得ようとするようなケースもあるでしょうし、昔から夢だった喫茶店やバーのマスターになるなどということもありうるでしょう。私の場合は、残りの人生を映画監督として生きていけないかと模索しています。

何かの商店主をやっている人、建築士や税理士など資格を取得して70代まで仕事を続けてきたような人が、「××歳を機に仕事をやめる」と宣言することがよくありますが、そのような選択はけっして得策ではありません。

農業や漁業、また職人のような仕事もそうですが、自分が「やめる」と決めない限り、続けられるような仕事であるならば、身体がもつ限り、できる範囲で一生続けることが老化を遅らせるためのいい方法です。

勤め人であっても、役職からは外されるかもしれませんが、「働く」ということからは引退する必要などありません。アルバイトや契約社員など、どのような形態であっても、「仕事」を通して社会との関わりを持ち続けることが、活動レベルを落とさず、若々しくいるための秘訣だと私は思います。

「定年後の起業」も選択肢になる

定年後に損をしない範囲で起業に挑戦することも、70代をアクティブに過ごすうえではよい手段です。さまざまなハードルがあった昔とは違い、いまでは資本金1円からでも株式会社を設立できるようになりました。

また、いまはインターネットの時代ですから、優れたアイディアさえあれば、やりたいことは何でもできる環境が整っています。

ただし、私が定年後起業の指南を専門に行っているコンサルタントに聞いたところ、定年後に起業して成功する人は、40代から50代のうちに計画をスタートさせた人にほぼ限られるそうです。定年のタイミングで計画を立て始める人はまず成功しないという話でした。

やはり、ある程度は前頭葉が若く、柔軟な思考ができるうちに計画を立てることが大切で、そうでないと現実のビジネスの世界では通用しない、ということなのでしょうか。

さらに、40代、50代から起業を考えている人の場合は、在職中に起業後に役立つ人脈作りに勤しみ、仕事で知り合う人たちとのつき合い方もそれなりに考えたものにするのでしょう。定年後に起業計画を立て始めたところで、もはやその遅れを取り戻せないという要因も大きいようです。