社会と関わる方法は「仕事」だけではない

退職後も社会と関わっていくという意味では、もちろん「仕事」がすべてではありません。

町内会の役員や、マンションの管理組合の役員、趣味の集まりの役職などでもいいのです。ボランティア活動も、退職後の社会参加としては1つの選択です。

誰かと協働し、誰かの役に立ったり、誰かに必要とされていると感じたりすることは、いつまでも現役意識を維持することに大いに役立つはずです。

陽気にステップを踏む高齢男性
写真=iStock.com/Deagreez
※写真はイメージです

70代になったら、ことさら「引退」などということは考えず、現役意識を維持することが大切です。それが、一気に老け込むことを防いでくれます。

「脳の萎縮」には要注意

よく「頑固な年寄り」という言い方をすることがあります。年をとって融通が利かなくなり、いつもムスッとしているような老人がいるとしたら、まさに前頭葉の萎縮が進んでいるのかもしれません。

この前頭葉の萎縮は、実は40代からすでに始まっています。医学の教科書に載っている脳の解説図のような、頭蓋骨の内側に隙間なく脳の組織が詰め込まれている「きれいな」脳の状態を、とくに努力もせず維持できるのは30代が限界です。

萎縮がどんどん進んでいくと、50代、60代くらいから「思い込みが激しくなった」「頑固になった」「怒りっぽくなった」といった傾向が少しずつ出てきます。

70代になるとこの傾向がさらに強くなるばかりか、何事にもやる気が出なくなります。これまでやっていたこともやらなくなり、会っていた人にも会わなくなり、家にこもりがちで不活発な生活になっていきます。

そうならないためにも、前頭葉の老化を防ぎ、意欲レベルを維持することが重要です。

「変化のある生活」を心がける

前頭葉の老化を防ぐには、「変化のある生活」をすることがいちばんです。前頭葉とは、想定外のことに対処するときに活性化する部位だからです。逆にいえば、毎日、単調な生活を繰り返していると、前頭葉は活性化せず、衰えてしまいます。

仕事やボランティア、趣味の集まりなど、外に出かける用事を生活の中に組み込むことが、単調な生活を送らないためにもっとも簡単な解決策です。用事で外出すれば誰か人に会いますし、思いがけない出来事に遭遇することもありますから、必然的に前頭葉を使います。

それ以外にも、日々の生活にどうすれば「変化」を取り入れられるか、常に考えて実践に移してみることです。

手間がかかるもの、大掛かりな準備が必要なものなどは避けて、まずはちょっとしたことから、生活に変化を作ってください。簡単なものであれば、いくつになっても新しい体験を生活に組み入れられるはずです。

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