長男との結婚によって女性の幸福度は低下する
図表1は夫が長男の場合と義両親と同居した場合の妻の幸福度の変化を示しています(*3)。図表1では、妻の幸福度を5段階で計測し、夫や妻の学歴や就業状態といった個人属性の影響をコントロールしました。
なお、分析には2000年から2018年までの日本版総合的社会調査(JGSS)というデータを使用しており、近年の日本の動向を反映しています。
図表1からわかるとおり、夫が長男の場合、妻の幸福度は低下しています。ただし、その影響は大きいとは言えません。
むしろ、義両親との同居のマイナスの影響が強く、夫が長男の場合の2.4倍です。
これらの結果から、「夫が長男であるかどうか」という点よりも、「義両親との同居」の方が妻の幸せには重要だと言えるでしょう。
ただし、夫が長男であるかどうかという点は、義両親との同居と関連しています。分析したデータでは、夫が長男の場合、義両親との同居割合は12%でしたが、次男以下の場合だと3%でした。つまり、夫が長男だと同居割合が跳ね上がる傾向にあるわけです。
以上の点を整理すると、①長男の夫と結婚→②義両親との同居割合上昇→③妻の幸福度低下というメカニズムがあると考えられます。
長男ほど年老いた両親の面倒を見る責任感が高い
長男ほど自分の両親と同居する割合が高いわけですが、その背景にはどのような要因が存在しているのでしょうか。
この点についても分析を行った結果、長男ほど「自分が親の面倒をみなければならない」と考える傾向が強いことがわかりました(*3)。
分析に使用したデータでは「年老いた両親の面倒を子どものうち誰が見るべきか」という質問があり、長男の既婚男性ほど「きょうだい全員で親の面倒を見る必要はなく、自分がみるべき」という考えを持っている割合が高くなっていたのです。
このような意識の差が親との同居に踏み切る背景にあると考えられます。
ちなみに、金銭面と生活面(掃除・料理・買い物・雑用)のどちらで親の支援を行うのかという点を見ると、長男ほど生活面で親の支援を行う傾向が強くなっていました。
これら生活面の支援には長男の妻も参加する可能性が高く、妻の負担を増加させていると考えられます。