生活保護関連の公的支出は平成20年度ベースで一世帯あたり235万円である。現金給付に加え、医療費や公共料金、教育費が無料になる。
大阪市の保護費(2863億円)は一般会計の16.9%を占め、人数も年々増加、民主党への政権交代によって受給条件もどんどん緩和されているという。
行列の中で出会った内山さんは、今年で65歳。もともと東大阪市で暮らしていたが、60歳を前に病気を患い、通院が続いて自活できなくなった。頼れる家族もいないため、西成にある救護施設に入所。
「朝5時起きの模範的生活」を1年ほど続けたのち、生活保護の受給資格を認められて、現在は単身で暮らしているという。
「もらっている金額は、生活費が大体8万円。家賃は別で、あわせて月12万円くらいです。料理はできひんから外で食べて、まあ一食500円では済まんなあ。だから1日2000円はかかる。贅沢はできひん。ただ、家にユニットバスはあるけど、銭湯が好きでな。せやからタバコは吸わんで、酒も飲まんで、風呂代と散髪代にまわしてます。やっぱり男は身奇麗にせんとあかんから」
西成の男たちは、なぜか一様に野球帽を被っている。内山さんも「西成スタイル」で外出時は帽子を必ず被るポリシーを貫いているという。
内山さんの住むアパートは、西成区役所から徒歩20分、遊郭街・飛田新地のど真ん中にある。“玄関開ければすぐ遊郭”というすさまじい立地の小さなワンルームで、家賃は月4万7000円。住居扶助費で認められるほぼ上限の金額だという。
「でもあんな部屋、外がボウボウうるさくてかなわん。夜もよく起きるんや。遊郭の客待ちの女と目が合うたびにイヤんなる。あいつら不潔やし不道徳や。こりゃわし不動産屋に騙されたのかもしれんで。3年前は泥棒まで入られた。最近じゃ頭も気持ちも重い。ストレスでもう、わし、あかんです。せやから一回だけやけど、ついつい遊郭でストレスを発散してしまった。皆さんのお金で、ほんまにすんません」
暮らしは質素なりに安定しており、高齢のため就労指導を受けることもない。「西成になじみきれない」という違和感を抱えつつ、内山さんはこの街で生きていく。