車の運転をやめた人が要介護になるリスクは2.09倍
このように、高齢になったからといって、即座に免許を返納する必要はないと私は思います。特に地方在住の高齢者(特に男性)は、運転免許を取得していて、自分で車を運転して行きたいところに行けるということが、1つのアイデンティティー(自分の存在証明)と考える方も多いと思います。
これまで外出の際に車を運転していた人は、免許を返納してしまうと外出の機会が極端に減ってしまうため、活動範囲が極端に狭まります。その結果、交友範囲が狭くなったり、運動量が減ったりして、数年のうちに介護が必要になったり、認知症になったりしてしまう人が少なくないのです。
実際、筑波大学の研究チームが、65歳以上の男女2800人を10年にわたって追跡調査したところ、車の運転をやめた人は、運転を続けた人に比べて、要介護になるリスクが2.09倍になったということです。車の運転をやめたことで、活動量が落ち、意欲も筋力も体力も減退してしまったと考えられます。
免許返納の時期は家族と相談して決めておく
車の運転は脳機能や反射神経のトレーニングになりますし、買い物先のスーパーやショッピングモールを歩いたりすることは運動にもなります。友だちに会って楽しく話せば、それだけで認知症予防になります。
ただし、返納する時期については家族と相談して決めておきましょう。1年に1回は、運転能力に問題がないか、家族に同乗してもらい確かめてもらえば安心です。
ちなみに75歳以上の後期高齢者の場合には、認知機能検査に合格し、運転適性検査や実車指導を含む高齢者講習を受けなければ、免許更新手続きはできません。
少しでも長い間、安全な運転を続けていくためには、脳機能や運動能力を落とさないことが必要です。今のうちから健康的な生活を心がけておきましょう。
それでも、いつか免許を返納する日が来るかもしれません。でも、大丈夫です。運転ができなくなっても、他の健康習慣は十分に実践可能です。できることをコツコツと、楽しんでやってみてください。