給与5%増で3000億円が必要になる
大企業の場合、政府の要請に従って、利益や内部留保などこれまでに生み出した収益を人件費に回すことは可能だろう。新型コロナによる打撃から回復してくれば、収益自体も回復してくる。人件費に回す原資はおのずから存在する。だからといって、国家公務員の人件費が民間に連動して増えたとしても、その原資は存在しない。税収か借金(国債)で賄うしかないが、税収が増える保証はない。
国民のおそらく過半数が必要だと考えている防衛費の積み増しでも、真正面から増税議論ができない中で、公務員人件費を賄うために増税すると政府が言い出せるのか。
国家公務員の人件費は5兆3000億円余り。5%増やすには3000億円近い財源が必要になる。自衛官だけでも2兆円近い。しかも、人手不足の中で、待遇を見直していかなければ、人材確保が年々難しくなる。国家公務員に優秀な人材が集まらなくなった、と言われて久しい。
消費税も法人税も国債もあてにはできない
防衛費の財源捻出のすったもんだからも分かるように、もはや増税する余地は小さくなっている。
消費税は1%の引き上げで2兆円以上の税収増になるが、すべて社会保障費に充当することになっており、消費増税分を防衛費や公務員人件費の引き上げに回すことは難しい。年金や健康保険料などの負担が増え、所得税を引き上げることも難しくなっている。富裕層に増税すればよいという意見も出るが、実際、それほど富裕層が多くいるわけではない。
そうなると主要な税源としては法人税になるが、防衛費ですでに4~5%の増税が検討されている。公務員人件費の引き上げに回す余力はないだろう。
結局は、国債で賄うことになるのだろうか。財政赤字の国で、公務員の給与を赤字国債で賄い続ければ、いずれ国家財政は破綻する。日銀の国債引き受けなどで財政破綻を回避しても、猛烈な物価上昇や円安に陥ることになりかねない。