「死霊」を避けるために「魅力的な見出し」をつける

尾上さんが言っているのは、メールを送る場合、本文も重要ですが、魅力的なキーポイントを作成する能力が必要ということになります。

そういう場合、本文に名文は要りません。読みたくなるような見出しを書く技術が要ります。編集者が見出しを書く際に発揮する、文章の中身をまとめ、さらに魅力をつけ加えるのです。添付した資料についても見出しをつけておくといいでしょう。

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尾上さんはこうも言っていました。

「トヨタでは大量の資料はつけないほうがいいとされています。一時期、増えたのですが、今はずいぶん減ってきています。

そして、これは昔、生産調査部で言われていた言葉があります。資料を多くつけてはいけないという意味の戒めの言葉です。

『最初は資料と呼ぶ。量が多くなったら紙量だ。もっと多くなって誰も読まなくなった資料は死霊しりょうなんだ』

送るほうは大切だからと大量の資料を送りますけれど、多いと先方のパソコンで死んでしまう。だからそれは死霊なんです」

添付資料はとにかく少なくすることです。そして資料を添付してメールを出す時はキーポイントを忘れずに書いておくこと。

キーポイントをまとめる際は記事の見出しだけを読んで「これはいい。わかりやすいな」と思ったものを真似する。

この3点さえ気をつけておけば確実に相手に届くメールを出すことができます。

トヨタが「DX化の波」に乗らない理由

さて、今はやりのデジタルトランスフォーメーション(DX)についてです。

トヨタには「カイゼンにはできるだけお金をかけない」という鉄則があります。高額な複合工作機械を導入すると、故障した時、専門家でなくては直せません。複合機能の工作機械よりも単機能のそれを並んで設置したほうが費用は安くなりますし、また、生産性も向上するのです。

現在、各方面でDX化が叫ばれています。猫も杓子もDX化を進めることが第一目的と思っているようです。

ですが、トヨタではちょっと違う考え方をしているようです。

TPS本部長の尾上さんはこんな話をします。

「まず最初に動作のカイゼンです。われわれが現場で大切にしているのは『設備カイゼンより動作カイゼン。動作カイゼンした後に設備カイゼンをしましょう』となっています。

最初から設備カイゼンすると最新式の複合機械を入れようとします。そうすると、お金がかかるのです。それよりもまず知恵をつかって最後にお金をちょっとだけ使いましょう。そこがトヨタの考え方です」