海外では引退した医師まで最前線へ

海外では、引退した医師までコロナ最前線に復帰して多くの殉職者を出したが、日本では医師は自分たちの身はしっかり守ったようだ。

全国労働安全衛生センター連絡会議によると、2022年3月までに死亡について労災請求がなされたのは医療従事者等が26件、それ以外が116件だったという。そして、医療従事者等に関する請求(死亡以外も含めて)の41.9%が医療業、残りは介護などである。一方、地方公務員災害補償基金による地方公務員の公務請求件数で、医療業の内訳として、医師が8%、看護師が83%、その他が9%という数字がある。

これらの数字から推定すると、コロナ感染で死亡し労災請求された医師は26人×0.419×0.08=0.87人となる。もちろん、これは詳細な数字が公表されていないため入手できる数字から推計しただけだし、さらに、労災の対象にならない開業医(医師全体の20%程度)は入っていない。それにしても数十人、数百人という規模ではなく、数人程度であるとしか考えにくい。

2020年4月、大阪市立十三市民病院がコロナ専用病院としたら、医師や看護婦などが次々と「敵前逃亡」で辞めていき、しかも、院長が「将来に役に立たない仕事だから辞めるなと言いにくい」といった趣旨の発言をした。もし、原発事故で電力会社の社員が事故現場での仕事を命じられて辞職したらプロ失格といわれるだろう。

医療に情熱を持たない医師が多すぎる

これも医療に情熱を持っているのでなく、経済的、社会的にオイシイから医師になった若者が多すぎるからだ。どんな仕事でも、待遇が悪すぎるとその仕事に就きたい若者が諦めてしまうので困るが、待遇が良すぎてもその仕事に情熱を持たない人が集まりすぎる。

また、トップクラスの医学部の入学試験は、わずかのミスも許されず、かなり特殊な準備が必要である。私の子供たちが通った私立の中高一貫校では、東大や京大の普通の学部ならば学校の勉強だけで十分なように教えるが、東大理IIIや京大医学部に行きたいのならば、別途塾に通っていただかないと無理だと言われた。

私立の中高一貫校は授業料が年50万円くらいだが、同じくらいの授業料をベネッセ系の鉄緑会など医系専門の塾に払わないと医学部に合格するのは難しいのである。

写真=iStock.com/onsuda
※写真はイメージです