1審と2審で判断が変わった裁判例

この事件では、スイカをモチーフにした写真(図表3)の類似性が問題となりましたが、第1審と控訴審とで裁判所の判断が分かれています。

第1審は、スイカの配置、スイカ以外の物の使い方、ライティング、撮影のアングル等の相違点を挙げて、類似性を否定しました。

一方、控訴審は、両者の相違点は、元の写真の表現の一部を欠いているか、改悪したか、あるいは、些細で格別に意味のない相違を付与したか、という程度のものにすぎず、新たな創作性を加えたものでもない(裁判所は「粗雑に再製または改変したにすぎないもの」と表現しています)として、類似性を肯定し、同一性の保持権の侵害にあたると判断しました。

出典=『オタク六法

類似性の判断は非常に難しい

おさらいになりますが、①依拠性と②同一性・類似性が複製・翻案の要件です。

依拠性については、作品の公表の先後などの時間的な要素が重要な判断要素になりますし、類似性があることじたいが依拠性の根拠にもなります。単なる偶然で具体的な表現の細部まで似ているようなことは、現実にはまず起こりえないからです。事案にもよりますが、依拠性が肯定されるハードルは必ずしも高くないと言えます。

他方で、類似性については、これまで紹介してきた裁判例を見てもわかるとおり、肯定されるか否定されるかは判断が非常に難しいところです。

もしも自分の著作物がパクられたら…

著作物を無断で複製・翻案等の利用をした相手に対してなんらかの手段を取る場合には、以下のようなステップを踏むことになります。

①DMなど、相手のアカウントに対して直接連絡する手段がある場合には、まずは直接連絡を取って、止めてもらえるよう交渉しましょう。SNSなどでは著作権侵害の通報のためのフォームが用意されていることもありますが、これを利用することも有効です。

②直接連絡しても反応がない、対応してもらえなかった場合、発信者情報開示請求により相手を特定します。

③相手が特定できたら、自ら、または代理人を通じて相手方に連絡をします。このときは、なにを求めるか(侵害行為を止めてもらいたいのか、利用料も請求するのかなど)によって、伝えるべき内容も変わります。

④それでも侵害行為を止めてもらえなかったりして希望する結果を得られなければ、訴訟によるほかありません。侵害行為の差止めや、損害賠償を請求することになります。場合によっては、刑事告訴を併せて行うことも考えられます。

自分がSNSに挙げたイラストを「パクリ」と言われた

ここからはよくある相談例を見ていきましょう。

【Q1】自分の描いた絵をSNSに投稿したところ、別の絵師さんからパクリだと言われました。パクリではないのに困っています。

【A1】パクリとは、要するに、著作者の許諾のない複製・翻案ですから、複製・翻案の要件を満たしていない限りは、パクリにはなりません。パクリだと主張する側が、①依拠性と②類似性の要件を満たしているかどうかを立証することになりますが、これまで見てきたとおり、これらの要件を満たすことは(さらには立証することは)必ずしも容易ではありません。すでに濡れ衣を着せられている以上、対応を誤れば問題が深刻化することも有りえますから、どのように対応すべきかを弁護士に相談するのがよいでしょう。