ツイッターの短文すら8割が理解できない?
「誰もが平等に知的である」というのは、言うまでもなく幻想です。そもそも私たちは、自分で思っているほど賢くありません。
各国の子どもの学習到達度を示すのが「PISA」ですが、「PIAAC(国際成人力調査)」はその大人版です。16~65歳を対象に、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「ITスキル」を調べたもので、2011~12年に、OECD加盟の先進国を中心に、24の国と地域で実施されました。
PIAACの「レベル3」は「小学校5年生程度」のスキルで、「読解力」の問題例では、図書館ホームページの図書検索結果から、設問にある書籍の、著者が誰なのかを聞いています。
「そんなの簡単すぎる」と思うでしょうが、驚くべきことに日本の成人の正答率は72.3%です。「レベル4」の問題例は、「150文字程度の本の概要を読み、質問に当てはまる本を選ぶ」ですが、日本人の8割近くが不正解です。ツイッターは140文字ですから、ユーザーの大半が内容を正しく理解できていない可能性がある。
「数的思考力」のレベル3の問題例は立体図形の展開ですが、正答率は62.5%。「ITスキル」のレベル3は「メールを読み会議室の予約処理をする」という、事務系の仕事では最低限必要な能力を試す課題ですが、これをクリアできた日本人はたったの8.3%……。
これらの結果をまとめると、以下のようになります。
①日本人の約3分の1は日本語が読めない。
②日本人の3分の1以上が、小学校3、4年生以下の数的思考力。
③パソコンでの基本的事務作業ができるのは日本人の1割以下。
「日本人がそこまでバカなわけない!」とショックを受けるかもしれませんが、安心してください。この成績でも、日本人は「読解力」「数的思考力」「ITスキル」いずれにおいても先進国で1位であったのです。
「できる」人の数だけ「できない」人がいる
「PIAAC」についてメディアがほとんど触れないのは、「経済格差の背景には知能の格差がある」という不都合な事実を暴いてしまったからでしょう。リベラルな社会はこれまでの間ずっと、知能のばらつきから目を背けてきました。
ベストセラーになった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)で、児童精神科医の宮口幸治氏さんは、医療少年院などで出会った子どもたちの多くが境界知能で、ケーキを三等分することができないことを指摘し、日本社会に大きな衝撃を与えました。
現在の日本では、「知的障害」はIQ70(偏差値換算で30)未満とされていますが、1950年代まではIQ85(偏差値換算で40)未満が基準でした。この見直しによって、IQ70~84(偏差値換算で30~40)は「ふつうの子ども」とされ、高校や大学を卒業して社会に溶け込むことが期待されたわけですが、現実には学校教育から途中で脱落することとなり、社会の底辺層を形成しています。