発信力や営業力がなくても仕事を引っ張ることはできる
【今和泉】いま振り返ると、私の人生はすべてが受動的な状態で進んでいると言えるかもしれません。
積極的に発信していくのが得意な人は、TwitterやYouTube、noteなど、自分の媒体を持っていろいろなことを発信していけばいいと思うんですが、私は発信熱がそんなにないんです。本やテレビの機会をいただいたのは私のツイートではなく、大山さんや石川さんのツイートでした。発信熱がない人がいくら頑張っても発信熱がある人には勝てないと思うので、無理はしないようにしています。
――でも、自分からあまり発信しないのに、どうしてチャンスが舞い込んでくるんでしょう?
【今和泉】自分が受動的であることを心得ているので、つくった作品をとりあえずウェブページに載せていつでも見られるようにしてあります。よく言えば、「常設展」でしょうか。そのうえで、ウェブサイトにお問い合わせフォームだけつくっておいたり、TwitterもDMを開放したりと連絡しやすい状態にしておくことは心がけていました。
ときどきホームページやTwitterに「お仕事の話しか返信しません」と書いている方がいて、めんどくさい連絡が来て大変なんだろうなと思いつつも、私はいろいろとお話をもらえることで成り立っているので、それは書かない。よくわからない話に誘われても、会いに行くようにはしています。
NHKドラマに登場する「存在しない場所」の地図を作ることに
――現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
【今和泉】今はデザインの仕事を辞めて、地理に関係しない仕事は請けなくなりました。空想地図制作の他、記事執筆、ワークショップ、テレビ番組やゲームの地理監修・地図制作、新商品や新プロジェクトのメンバーとして関わることもあれば、グッズ販売の収入もあり、地図関係でも内容は多岐にわたります。
空想地図制作の大きな仕事で言うと、NHKのテレビドラマ『64(ロクヨン)』に登場する架空の地図を小道具としてつくりました。ドラマの舞台も実在しない場所なので、ドラマ内に地図が登場すると、どうしても0から作るしかなくなりますからね。
――そんな需要があるんですね。これはどういった経路で依頼が来たんですか?
【今和泉】ほとんどの空想地図制作の依頼に共通するんですが、つくらないといけなくなると、皆さんまずは自分でつくろうとするんです。でも、つくれないんですよ。どう検索するかは知らないんですが「存在しない 地図」といったキーワードで検索するんですかね。いずれにしても私の空想地図が出てくるので、うちのウェブサイトのお問い合わせフォームから連絡するというのが一連の流れだと思います。
ちなみに、空想じゃない地図だと、鎌倉や藤沢方面を走る江ノ電バスの路線図をつくっています。