「月9=恋愛モノ」の時代は過ぎ去っている
朝ドラ・大河・日曜劇場以外に、固定のドラマ枠として語られることが多いのが「月9」だ。短縮形の愛称の親しみやすさに加えて、トレンディドラマや恋愛ドラマでヒット作を連発した全盛期の印象が強いからだろう。
80年代後半はトレンディドラマ黄金期で、“ぷっつん”やら“びんびん”の「擬音系職業モノ」、「君」シリーズ(瞳をタイホしたり恋したり、嘘をついたり)が話題になった。
90年代に入ると、バブル期の浮かれた空気を抑えた恋愛ドラマが主流に。『東京ラブストーリー』(1991年)、『101回目のプロポーズ』(1991年)、『ロングバケーション』(1996年)、『ラブジェネレーション』(1997年)、『やまとなでしこ』(2000年)あたりが今でも多くの人に語り継がれている。視聴率も20~30%という時代で、たとえ見ていない人でも、月9=恋愛モノという刷り込みがある。
では今はどうか。日本のドラマを見ない人、華々しい月9を知らない世代も増えた。オシャレな人々の素敵ライフに興味もなければ、ドラマに恋愛要素は不要と感じる人も増えた。みなさん、とっくに「月9はこうでなきゃ」という呪いから解放されているのだ。
過去の月9ブランドにこだわっているのは、実はオールドメディアと中高年だけで、全体的には「面白ければ枠はどうでもいい。TVerやサブスクで見るから、月曜も9時も関係ない」というのが実態ではなかろうか。
主流は堅実なメディカル路線と本格ミステリー
実際、ここ数年の月9は、メディカルもしくはミステリーが主流だ。枠を変えて月9に移動した『コード・ブルー』(2008・2010・2017年)のヒットを皮切りに、窪田正孝主演で放射線技師を描いた『ラジエーションハウス』(2019・2021年)、上野樹里主演で東日本大震災を描き続けた『監察医 朝顔』(2019・2020年で、season2は2クールぶち抜き)、波瑠主演で夜勤医師の憂いを描く『ナイト・ドクター』(2021年)、そして10月にスタートするのは吉沢亮主演「PICU 小児集中治療室」である。
命と向き合い、激務をこなす医療従事者をメインに、心温まるエピソードをお届け。医療系といえば『ドクターX』や『DOCTORS』など、テレ朝のシリーズモノが強いのだが、令和の月9が背中を追っている形だ。
また、ミステリーのはしりは『ガリレオ』(2007・2013年)あたりと思われるが、この数年、人気俳優を起用した本格ミステリーの台頭が目立つ。ディーン・フジオカ主演の『シャーロック』(2019年)、菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』、綾瀬はるか主演の『元彼の遺言状』(2022年)と続いている。さんざん煽って視聴者に考察とSNSの書き込みを促す流行りのスタイルではなく、くせの強い切れ者の主人公に推理を託し、その一挙手一投足に集中できるミステリーでもある。
「シン・月9」のブランドイメージはまだ定着していないかもしれないが、確実に生まれ変わっていることがわかる。