大事な秀頼と自滅する最期を選んだ

いや、それより、彼女は秀頼の教育において決定的なミスをしている。

「カエルの子はカエルになれるが、太閤の子は太閤になれるとは限らない」

永井路子『歴史をさわがせた女たち 日本篇』(朝日文庫)

ということに気づかなかったのだ。秀頼は秀吉と似ても似つかないボンクラであることを見ぬく冷静さにかけていた。今歴史をみれば自明の理であるそのことが、彼女にはわからない。現代だってよくあることだ。社長の子が社長にむかず、東大出の二世は必ずしも東大にはいれないのに、それに気づかないママが何と多いことか――。

やがて彼女は挫折する。関ケ原でおねねに手痛いしっぺ返しをうけたことは、いずれふれる機会もあるだろう。それにつづいて、大坂冬の陣、夏の陣――徳川方と戦ってはことごとく敗れて、遂に秀頼とともに火の中で自殺してその生涯を終える。一生落城につきまとわれた女性にふさわしい最期である。

実はこの前に、家康は、秀頼が大和一国でがまんするなら命を助けてやろう、といっている。狸オヤジの真意のほどはわからないが、もしそれがホンネだとしたら、案外そのあたりが秀頼の能力にふさわしかったのではないか。が、わが子を愛したあまりその才能を過信した母はついに自滅の道を選んだ。

過当な期待でわが子を押しつぶす――そんなおろかさはお茶々一代でたくさんだ。四百年後の現在までくりかえしたくはないものである。

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