史上最大の負債総額を出して破綻したエルピーダメモリ

これまで日本で行われた企業再建のかなりのものが、官主導で行われた。企業救済を目的とする官製ファンドとして、2003年に経済産業省が主導して「産業再生機構」がつくられた。そして、04年には、カネボーやダイエーの再建にかかわった。さらに09年には、「産業革新機構」が設立された。将来性がある企業や企業の重複事業をまとめることによって、革新をもたらすとされた。

半導体産業については、NEC、日立のDRAM事業を統合したエルピーダメモリが1999年に発足した(後に、三菱電機のDRAM事業を譲り受ける)。しかし、経営に行き詰まり、改正産業活力再生特別措置法の適用第1号となって、公的資金活用による300億円の出資を受けた。それでも事態は好転せず、2012年2月に、会社更生法の適用を申請し、製造業として史上最大の負債総額4480億円で破綻した。

写真=時事通信フォト
経営破綻したエルピーダメモリの本社が3階に入るビル=2012年2月28日、東京・中央区

日本の半導体産業が弱体化したのは、補助金が少なかったからではない。補助金漬けになったからだ。「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう。

莫大な補助金が投入されたジャパンディスプレイだったが…

ジャパンディスプレイ(JDI)は、ソニー、東芝、日立が行っていた液晶画面事業を合体して2012年につくられた組織だ。産業革新機構が2000億円を出資し、国策再生プロジェクトとしてスタートした。ところが、19年に危機的な状態になった。

産業革新機構から設立時に2000億円の出資を受け、16年から17年にかけても750億円の投資が追加でなされた。赤字の民間企業に国の金を投入し続けることに対して批判があったが、17年には1070億円の、18年にも200億円の支援がなされた。しかし、18年12月10日、産業革新投資機構の民間出身の取締役全員が辞職。革新機構は機能を停止した。

ジャパンディスプレイの財務状況は厳しいままだった。一時は債務超過に陥った。会計不正事件もあった。20年10月、石川県白山市の工場をシャープとアップルに売却し、経営安定に努めているが、いまだに赤字を続けている。液晶は、半導体と並んで日本製造業の強さの象徴であり、お家芸の技術とされていたものだ。それがこのような状態になった。必要なのは、世界的な製造業の構造変化に対応することだ。

数社の事業を統合して重複を除くというようなことではない。エルピーダメモリやジャパンディスプレイが成功しなかったのは、世界の製造業の基本構造が変わってしまったからだ。