「デフレ」と「ディスインフレ」は別物

2回目に対談した際は、その反省を活かして、「定義をきちんと設定しよう」とご自身でも思ったのか、冒頭から討論のテーマである「デフレ」の定義についてかなり揉めました。

経済学の一般的な定義では、デフレとは物価が2年以上連続でマイナスになることです。そして、デフレは物価の下落を通して企業業績を悪化させ失業者を増大させることが問題だと考えられています。

しかし、ひろゆきさんは、「ドイツがデフレだった」とおっしゃりました。話を聞いてみると、彼はデフレの定義を「ディスインフレ」と誤解していたようです。ディスインフレとは、インフレ率が極めて低い状態のことを指しますが水準的にはゼロ以上の状態です。

ひろゆきさんは、「ITバブルの頃、日本は物価が下がってデフレだったが、景気はよかった」とおっしゃる。でも、あの当時の日本のインフレ率は、マイナス圏のなかで上昇していました。インフレ率の水準とモメンタム(勢い、趨勢)をおそらく混同されているのだろうなと思いました。

このように、ひろゆきさんの言葉の定義やデータの解釈に甘いところがあり、私にそこを突かれる原因になったのは間違いありません。

まずは、定義をきちんと確認する。これは誰かと議論や話し合いをする際は、ぜひ忘れないでほしいと思います。

弁論部がエビデンスを極めるワケ

定義をしっかりと確認したら、「ロジック」を組み立てましょう。その際に、単なる言いっぱなしの主張では何の説得力もありません。絶対に欠かせないのが、「エビデンスの提示」です。どれだけ説得力と信ぴょう性のあるエビデンスを提示できるかが、議論を決する決定打となります。そして、エビデンスを用意したら、そのエビデンスが主張とどう関連するかを証明する論拠をきちんと示す必要があります。

弁論部に在籍した際、確実なエビデンスと、そのエビデンスに基づいたロジックを用意するトレーニングは、イヤというほど行いました。

そのエビデンスはどういう主張をサポートしているのか。
そのエビデンスは本当に正しいのか。
そのエビデンスはロジックとつながっているのか。
そのエビデンスとロジックが関連することを証明する論拠はあるのか。

これらの要素を確認し、相手の主張に穴がないかを探し、疑問点があれば突っ込む。エビデンスがない主張は、もはや論外です。