なぜ日本のテレビはつまらなくなったのか

特にテレビマンから不満の声が上がっているのが、4月15日に発表された「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に対する見解だ。「視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」として、放送局に改善や配慮を求めたものだ。

BPOは「痛みを伴う笑いは、いじめを助長する」というのだ。ある民放キー局のバラエティー番組担当のプロデューサーはこう話す。

「いまバラエティーの現場的には例の『痛みを伴う笑いNG』っていうのが疑念を持たれています。BPOにそこまで言われる筋合いなのか、BPOが言ったからといってそのまま従う必要があるのかは率直に疑問です。ダウンタウンの年末特番で恒例だった「ケツバット」は放送そのものがなくなりましたが、それでいじめは減ったのでしょうか」

BPOは「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について去年8月から審議に入り、その結論としての見解が4月15日に出されたわけだが、去年8月の審議入りの頃からすでにバラエティーの制作現場はかなり萎縮してしまっている。

「痛みを伴うことを笑い」がNGになった

日本テレビは「BPOとは直接的な関連性はない」としているが、結局2021年末の「笑ってはいけないシリーズ」は放送休止となった。そして、お笑い芸人たちの生活を脅かすことにもなってしまっている。ベテラン芸人が多く所属する芸能事務所の幹部はこう話す。

「うちの場合は、一部の芸人は淘汰とうたされてる感はありますね。テレビに一切呼ばれなくなりました。他の芸人も、芸風に気を遣わないといけないので、良さがそがれるのでやりにくいですね。テレビの制作側も気を遣いますし、お互い『コンプラ気にしている合戦』の中、日々現場を過ごしてる様な気がします。芸人たちはやる気を無くしてしまっている感がありますが、そんな中でもやらないと生きていけないので、必死で試行錯誤しているといった感じです」

このように、現場は死活問題だ。深刻な苦しみを味わっている。私はこのBPOの「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーについての見解」は非常に大きな問題をはらんでいると思う。そして最近のBPOのあり方はかなりおかしいと思う。

ひょっとしたら日本のテレビ番組を殺してしまうかもしれない、とすら考える。そこで今回は、テレビマンの端くれとして「BPOのあり方」に異議を申し立てたいということで、この文章を書くことにした。

なぜ、私が「BPOはおかしい」と考えるのか。まず、BPOとはどんな機関なのか、というところから話を始めよう。